研究課題/領域番号 |
26560427
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
上田 実 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60265931)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | エキソソーム / メタボローム / 細胞間コミュニケーション |
研究実績の概要 |
ヒト血漿中のメタボローム解析は多くの研究機関で検討されているが、なかなか生理活性物質の発見には至らないようである。これはひとえに、目的とする生理活性物質の濃度が極端に低いことに起因すると考えられており、質量分析装置の分析感度向上が唯一の解決策と考えられている。 本研究では、細胞間の情報伝達に関与する分泌機構に焦点を当てた新規化合物探索研究を提唱する。細胞間コミュニケーション機構として近年注目を集めるエキソソームに着目し、そのなかに濃縮され、比較的高濃度で含まれると推定される低分子の分析を行うことで、技術的ブレイクスルーが必須とされていた新規内因性生理活性物質の探索に新たなストラテジーを提唱する。近年、脳内のシナプス全細胞から分泌されるエキソソームにカンナビノイドが含まれており、シナプス後細胞へと輸送されるとする報告があり、エキソソーム内には新規の低分子生理活性物質も含まれている可能性が高まっている。 現在の所、動植物培養細胞系を用いてエキソソーム分離に関する基礎的な検討を行っている。培地からのエキソソーム分離は、超遠心分離を主体とした分離法を中心に検討を行っているが、分離画分中のエキソソーム量を知るための適切なマーカー分子の設定が重要であることが分かった。同時に、脂質膜からの低分子化合物の適切な分離処理法に関しても、さらなる検討が必要である。 また、細胞応答が活性化され、細胞間コミュニケーションに関与する信号分子分泌の昂進が期待される病態患者の血漿を用いた実験の可能性を模索したい。現在医学研究者などを中心に、サンプル提供を交渉中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在エキソソームの効率的な回収方法を検討している。内容物の分析には、比較的多量のサンプルが必要であるが、それを可能にする回収法としては超遠心分離が上げられる。しかし、超遠心法による回収では精製度の高いサンプル回収は難しく、適切なマーカー分析と組み合わせた信頼度の高い回収・精製が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、精製法の改良を進めると共に、適切な分析サンプルの入手に尽力する必要がある。特に、細胞間コミュニケーションシグナルを豊富に分泌していると考えられる病態患者の血漿入手が可能であるか、学内外に共同研究者を求める必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度実施予定の高感度質量分析装置によるメタボローム解析について、サンプル分析に付すことができる純度のサンプルが得られなかったため、次年度以降に繰り越すことになった。
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次年度使用額の使用計画 |
高感度質量分析装置によるメタボローム解析を実施する予定である。
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