研究課題/領域番号 |
26560431
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
友池 史明 東京大学, 生産技術研究所, 研究員 (70708586)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | トランスロコン / 遺伝子発現 / MEMS / リポソーム |
研究実績の概要 |
2014 年度は人工脂質二重膜を繰り返し形成するデバイスを作製した。当初の目的では、マイクロメーターサイズの穴にバクテリア由来のリポソームを固定することを計画していたが、マイクロサイズの穴を均一に作成することが難しい上に、デバイス中で破損することも多く、また、細胞破砕液に含まれる不純物が穴をふさぐことが予想されたため、固定方法を改良した。具体的には脂質二重膜の平面膜を形成し、形成した膜にリポソームを融合する方法で解析を行うことにした。 従来の方法では、顕微鏡観察可能な平面膜を形成することは困難であったため、回転式のチャンバーを流路上で回転させて二つの溶液を縦方向に接触させることで脂質二重膜を形成する手法を開発した。この際、脂質分子がとけたオイル溶液を回転チャンバーと流路の間に添加することにより、流路とチャンバーの溶液間に膜状の構造物が形成された。光学顕微鏡により、膜状の構造物の形成と変化が観察された。また、回転式チャンバーを回転させることにより、膜状構造が繰り返し形成された。形成された膜が脂質二重膜であることを確認するために、電気計測を行った。膜厚を計測したところ、既知の脂質二重膜の厚さとほぼ一致していた。また、自発的に膜に局在する膜タンパク質の一種であるアルファ・ヘモリシンを添加したところ、ヘモリシン由来のシグナルが計測された。以上のことより、本デバイスにより、本研究課題で求められる観察可能な脂質二重膜が繰り返し形成できることが示唆された。また、解析に必要な蛍光タンパク質 GFP の遺伝子などの準備も完了した。 本研究結果は分析技術における国際学会である MicroTAS、及び微細加工の国際学会である MEMS において発表した。また、国内学会でも日本生化学会、科学とマイクロナノシステム学会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は、新たに繰り返し顕微鏡観察可能な脂質二重膜を形成する手法の開発に成功した。繰り返し膜を形成するデバイスは、少量のサンプルで繰り返し測定することができるため、熱的揺らぎが大きく影響する現象を解析するのに適しており、本研究課題を実施するために必要不可欠である。また、本研究以外への応用も期待される。以上のことより、本年度は大きく前進したといえる。また、遺伝子操作等の実験系のセットアップについても完了している。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の前進により、本研究計画で計画したうち、デバイス構築は完了した。平成27年度は、まず本デバイスに関して、論文にまとめ、国際誌にて報告する予定である。また、膜上の現象を解析することに適しているかを実証するために、膜形成と膜タンパク質の相互作用について、測定も行う。また、平成26年度に、遺伝子操作系の準備も完了したため、様々な配列を N 末に持つ GFP を構築し、無細胞抽出系を利用して解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初目的と異なり、無細胞合成系を用いた実験を平成26年度に実施する計画となったため、無細胞合成系の試薬購入にかかる費用を平成27年度使用額にした。また、平成26年度に開発した顕微鏡観察可能な脂質二重膜を形成するデバイスについて、論文にまとめ、発表することを計画しているが、年度内に投稿にいたらなかったため、英文校閲にかかる費用、及び雑誌掲載料が平成27年度に必要となった。以上の理由により、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は大腸菌由来のリポソームを調整し、開発した脂質二重膜に固定する。その後、無細胞合成系試薬を添加することにより、蛍光タンパク質を発現させる。そのため、生じた平成27年度使用額の一部は、無細胞合成系試薬の購入に用いる。 また、開発した顕微鏡観察可能な脂質二重膜を観察するデバイスを論文発表するため、論文投稿準備を行っており、平成27年度に生じる英文校閲料、雑誌掲載費用の一部を平成27年度使用額より支払う。
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備考 |
若手優秀発表賞受賞(第87回 日本生化学会大会)
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