平成27年度は、昨年度に引き続き、脂質二重膜上での現象を観察するために、顕微鏡観察が可能な脂質二重膜を繰り返し形成するデバイスを開発した。顕微鏡観察面と同一平面に脂質二重膜を形成するデバイスは、これまでいくつか報告されていたが、繰り返し膜を形成する方法はなかった。本研究計画で開発したデバイスは、流路上で回転するチャンバを配置することで、繰り返し膜を形成することを実現した。本年度は、膜の形成率を向上させるため、膜形成の条件検討と繰り返し形成された膜の定量的解析を行った。形成した膜のキャパシタンス値を求めることで膜厚を形成したところ、先行研究と同等の膜厚形成が繰り返し確認された。また、形成した膜に膜にナノサイズの小孔を形成するヘモリシンを導入したところ、階段状の電気シグナルが繰り返し得られた。コンダクタンス値にばらつきがあるものの、ヘモリシンは脂質二重膜特異的に局在することから、本デバイスで繰り返し脂質二重膜が形成されたことが示唆された。本成果については、現在国際誌に投稿中である。申請者の異動により遅れているものの、現在、大腸菌を用いた実験を計画している。 また、安定した平面膜を実現するため、ハイドロゲルと流路の二層からなるデバイスを開発した。本デバイスはハイドロゲルの下の流路に脂質溶液を水溶液をながすことで、ハイドロゲルと流路の間に supported lipid bilayer を形成する。ハイドロゲルの種類、濃度を検討したところ、0.7%のアガロースゲルで、脂質二重膜と思われる領域が顕微鏡により観察された。この濃度は、一般的な DNA の電気泳動で使われる濃度であるため、本デバイスで用いるハイドロゲル内で、DNA をはじめとする生体高分子を拡散させることが可能であることが期待できる。本成果については、韓国で開催された国際学会において、発表した。
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