研究課題/領域番号 |
26560432
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
黒田 裕 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10312240)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 蛋白質工学 / 生物活性物質の探索 / SS結合 / 探索法 / ランダム変異 |
研究実績の概要 |
ガウシア・ルシフェラーゼ(以下GLuc;168残基)は、優れた最小のレポータ蛋白質となる可能性を秘めているが、5本のSS結合を有するため、大腸菌では天然状態での発現が難しく、その応用は遅れている。計画では、大腸菌を宿主としてSS結合を2本のみ有するGLucのN末端ドメイン(GLucの1-97残基;以下、GLucN)を用いて、その発光活性を改変し、最小のレポータ蛋白質(約90残基;蛍ルシフェラーゼの1/5以下)を創生することを目的とした。26年度では以下の成果を得た。 1、GLucNが発光活性を有することを確認したが、様々な工夫を行ったにも関わらず、その発光強度は弱く、また、大腸菌を宿主として発現したGLucNの収率が悪かった。そのため、当初予定していたGLucNの代わりに全長GLucを対象として本計画を実施することを決定した。 2、まず、発現量を低下させるレアコドン(rare codon)を除いた全長GLucの遺伝子配列を全合成し、新規遺伝子から成るGLucの発現系を作製した。発現系はpET15(Novagen社)を基にしており、その収量は従来の発現系を用いた時の約2倍に向上した(3mg/L)。 3、次に、ランダム・プライマーを用いてGLuc配列中に変異を導入し、発光波長が野生型と異なる変異体を探索(スクリーニング)した。スクリーニングには、研究代表者が先行研究で解明したVanX酵素による大腸菌の自己溶菌効果を応用した。VanXの溶菌効果を用いることで、GLucを菌体内からマイルドに抽出し、未精製状態で、培地中でスクリーニングすることを可能にした。その結果、最大発光ピークの波長が5nmレッドシフトした変異体を複数同定することに成功した。 以上の通り26年度では、全長GLucの新しい発現系を構築し、収率を約2倍に向上させ、最大発光ピークが5nmレッドシフトしたGLucの変異体を複数同定した。さらに、VanX酵素による大腸菌の自己溶菌効果を、未精製酵素のスクリーニングに応用することが可能であることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本計画では、予定していた単一ドメインのGLucNの構築を断念し、代わりに全長GLucを用いて実行した。全長GLucはSS結合を多く形成するが、全長GLucの遺伝子を新規に合成したことで発現量を大幅に向上することに成功したため、本計画に用いた。その結果、発光活性を改良したGLucの変異体が複数同定できたことなどから、全長GLucの改良が順調に進んでいると言える。さらに、計画の重要な要素であったVanXの溶菌効果を酵素のスクリーニングへ応用するという目的を達成したことから、全体的にも計画は順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方針として、2つ考えている。まずは、ランダム変異法を用いて全長GLucの発光最大強度の波長がさらにレッドシフトした変異体を探索する。次に、全長GLucの発現量を大幅に向上できたため、核磁気共鳴法(NMR)を用いた構造解析を進める予定である。M9培地で15N標識したGLucを1mg精製し、HSQCスペクトルを測定したところ、十分解析可能で良質なスペクトルを既に得ている。
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