研究課題/領域番号 |
26560435
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
森田 洋行 富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 教授 (20416663)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ポリケタイド合成酵素 / 酵素工学 / 立体構造解析 |
研究実績の概要 |
これまで我々は,植物ポリフェノールの基本骨格を構築する植物Ⅲ型ポリケタイド合成酵素(PKS)の活性中心キャビティ構成アミノ酸残基を他のアミノ酸に置換し,活性中心キャビティの形状と大きさを変化させることによってⅢ型PKSの機能改変と新規化合物の生産に成功してきた.今回我々は新たな試みとして,野生型Ⅲ型PKSの中で最大のマロニルCoA縮合回数を触媒するキダチアロエ由来オクタケタイド合成酵素(OKS)の活性中心キャビティ構成アミノ酸残基を欠損させることにより、その機能改変を試みた.種々アミノ酸欠損変異酵素を作成し、それらの反応生成物をLC-MSを用いて解析した結果,OKSのV351欠損変異酵素では,OKS野生型が生産するSEK4やSEK4bの生産能を消失して,ヘキサノイルCoAに3分子,5分子,6分子のマロニルCoAがそれぞれ縮合したヘキサノイルトリケタイドラクトン,C16レゾルシノール、C18フロログルシノールを特異的に生産することが判明した.他の脂肪族CoA(炭素数8~12)を開始基質としても同様で,OKS野生型がSEK4やSEK4bとともに生産する脂肪族CoAに3分子または4分子のマロニルCoAが縮合したトリケタイド及びテトラケタイドラクトンを特異的に生産することが示された.また、マロニルCoA単独または他の芳香族CoAとともにマロニルCoAを基質として作用させた場合では,OKS野生型において若干の生成が確認される4分子または3分子のマロニルCoAのみが縮合したテトラケタイドラクトン及びトリアセティックアシッドラクトンを生成することが判明した.OKS V351欠損変異酵素は,開始基質に対する基質特異性が脂肪族CoAに特化したことが示唆された.一方,他のアミノ酸欠損変異酵素では,活性の消失もしくは野生型と同一の活性が確認されるのみであった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規化合物の生産までには至っていないものの,C16レゾルシノール、C18フロログルシノールを特異的に生産する機能改変酵素の創出に成功し,Ⅲ型PKSへのアミノ酸欠損変異の導入が新たな機能改変法の一つとなり得ることを示すことができた.また、他のアミノ酸欠損変異では活性の消失などがみられたものの,さらに欠損変異を導入していく上で有用な知見を得るに至っていることから、本研究は,おおむね順調に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
OKS V351欠損変異酵素の活性中心キャビティ構成アミノ酸残基をさらに欠損または他のアミノ酸に置換して,さらなる機能改変と新規化合物の生産を目指す.また,OKS V351欠損変異酵素のX線結晶構造解析を行い,欠損変異が活性中心キャビティの構成に及ぼした影響を原子レベルで明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
基質の合成で用いる試薬の在庫が無く当該年度中に購入できなかったため,その費用が次年度使用となった.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用となった当該助成金はこの試薬の購入に充てる予定である.
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