細胞膜は細胞と外界をしきる区切りで,主に水に溶けない脂質により形成されている。この脂質成分は均一ではなく,マイクロ~ナノメートル単位の小さな構造単位で複雑に変化して,生命活動に重要なシグナル伝達や物質移動を担っている。親油性化合物は水に溶解することができないため,生体内では細胞膜などに吸着して存在している。すなわち,生体内の親油性化合物は,水溶液としてではなく,細胞膜表面に吸着した膜結合構造として生体分子と反応する。本研究では,この膜界面でおこる反応に対する膜の脂質組成の影響を,熱分析により精査し,自由エネルギーの変化量として定量化することに成功した。
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