研究課題/領域番号 |
26560437
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
倉林 敦 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (00327701)
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研究分担者 |
住田 正幸 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10163057)
広瀬 裕一 琉球大学, 理学部, 教授 (30241772)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 生体物質 / 生化学 / フクラガエル / 国際情報交換_ドイツ_アメリカ_南アフリカ / プロテオーム解析 / トランスクリプトーム解析 |
研究実績の概要 |
フクラガエル属(Breviceps)は、皮膚から分泌する「糊」によって雌雄が体を接着して抱接するという変わった特徴を持つ。本研究では、60年にわたり謎のままであった「フクラガエル糊」について、生物・物理学的特徴を解明し、さらに、糊物質の化学成分を決定することを目的とする。 本年度は、フクラガエル皮膚から外部刺激によって糊成分を含む粘液を用いて以下の研究を実施し、それぞれ結果を得た。(1)糊を出すのは雄か雌かの確認:本研究課題申請前の予備実験では、メス個体のみから糊が分泌されたが今年度多数の雄個体について外部刺激を行った所、雄個体も糊を出すことが判明した。また、雌は背中側皮膚から糊を出すが、雄は背中に加え、顎から胸にかけての部位でも糊を出すことが分かった。 (2)糊の接着力の強さの測定:本年度は複数個体を用いて分泌された糊の強度を測定した。この結果、糊の接着力は強い場合で 500g/cm2 程度であったが、個体間によって差が大きかった。(3)ガスクロマトグラフィー分析:糊物質を含む粘液についてGC分析を試みたが、何も検出されなかった。ここから、糊粘液が気化しにくい成分である、またはGCで解析できる低分子は含まれないことを示唆された。(4)プロテオーム解析:フクラガエル雄・雌の糊粘液についてSDS-ポリアクリルアミド電気泳動を行った所、多数の高分子蛋白質バンドが検出された。また、還元剤のメルカプトエタノールを加えた場合に、低分子側に移動するバンドが見られた。これらのバンドが糊物質の候補と考えられた。さらに、SDS-PAGEで現れた57のバンドについて、LC-MS/MSを用いて質量分析を行ったところ、既知の蛋白質に加え、現在までに同定できない蛋白質があることが分かった。(5)トランスクリプトーム解析:フクラガエル雄雌の背側腹側皮膚についてmRNA-Seqを実施し、現在解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「雄も糊を出す」「糊の接着強度が個体間でかなり差がある」という予備実験とは異なる結果が出た点は予想外であった。しかし、プロテオーム解析とトランスクリプトーム解析が順調に進展している。また、皮膚の組織切片を観察し、糊を分泌する腺構造候補を発見した。以上の点より、研究は概ね順調に進展していると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究結果から、糊物質は蛋白質である可能性が高くなった。今後は、プロテオーム解析とトランスクリプトーム解析の結果を統合し、糊粘液に含まれる主要な蛋白質のアミノ酸配列を推定し、糊物質候補をさらに絞り込む。また、糊は皮膚の分泌腺から放出されると考えられるので、ある程度候補蛋白が絞れた時点で抗体を作成し、その蛋白質の皮膚での存在位置を確かめる。また、培養細胞や動物細胞を用いた蛋白質合成による糊遺伝子の特定を検討する。 一方で、人工繁殖の試みは限定的な成功に留まる。今年度(H27)は、現地(南アフリカ)において、状態のいいフクラガエルを用いて人工排卵を試みる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
外注予定であった次世代シークエンス解析を共同研究で実施するなど、当初の予定より若干のコストダウンが生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
必要消耗品や生体購入代金として使用する。
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