研究課題
前年度に確立した人工糖タンパク質合成法を用いて、各種糖鎖を表面に有する人工糖タンパク質を合成した。これを腫瘍モデルマウスに注射して前年度と同様の近赤外蛍光イメージング法を用いて評価したところ、末端にシアル酸を特定の結合様式で持つ糖鎖の場合に腫瘍への顕著な集積を確認することが出来た。糖鎖は単独では受容体との相互作用が弱いことが知られているが、集積させることで標的細胞への親和性を著しく高め、腫瘍のターゲティングを可能にしたものと考えられる。続いて本人工糖タンパク質合成法を、複数種の糖鎖を任意の割合で含む人工糖タンパク質合成法へと拡張した。異なる糖鎖を結合させる試薬を順次作用させる手法と、複数の糖鎖を同一ユニットにまとめた後にタンパク質に導入する手法の2つを開発した。この手法で得られた人工糖タンパク質の動態を生きたままの動物内で追跡したところ、単一の糖鎖をもつ人工糖タンパク質と比較して、糖鎖の導入順序や割合によって腸管からの排出速度が著しく向上することを見出した。生体内での糖鎖の認識にあたっては、糖鎖の種類だけでなく位置関係も重要な因子であることを示した。さらに合成した人工糖タンパク質に金属触媒を担持することで、生きている動物の中の狙った場所で有機合成反応を起こすことを試みた。モデル反応として人工糖タンパク質に担持した金触媒によるプロパルギルエステルのアミド交換反応を行ったところ、細胞表層のタンパク質リジン残基に対して選択的に蛍光基を導入することが出来た。本知見は生体内の狙った場所で遷移金属触媒反応を実践した初めての例であり、ドラッグデリバリーシステムへの応用が期待できる。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 5件、 査読あり 6件、 謝辞記載あり 6件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) 備考 (2件)
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