研究課題/領域番号 |
26560444
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
長澤 和夫 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10247223)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | i-motif / DNA高次構造 / リガンド / シトシン / インシリコ / グアニン四重鎖 |
研究実績の概要 |
アイモチーフ(i-motif)は、シトシンが豊富に存在するDNA 配列で形成される特殊な高次構造である。これは、グアニンが豊富なDNA 配列で相補的に形成されるグアニン四重鎖(G4)構造と同様、転写やエピジェネティクスを含む様々な生命現象において中心的な役割を担うことが予測されている。しかしi-motif 構造を、安定化し制御する低分子化合物(i-motif リガンド)が存在しないため、その機能解明がすすんでいない。本研究では、i-motif の機能解明を指向し、i-motif を選択的に安定化するリガンドの創製を以下の2点から検討した。 (1)C-C 塩基対平面を標的とするアプローチ i-motifに特徴的なπ電子を豊富に持つC-C 塩基対平面に対し、これとπスタッッキングを介して相互作用する平面性の高い低分子化合物の創製を検討した。その結果、これまでのG4リガンド開発での知見を基に合成した化合物の一つが、i-motifに対して選択的に安定化能を示すことがわかった。 (2)i-motif グルーブを標的とするアプローチ i-motifに特徴的なグルーブを認識する低分子化合物について、in silicoドッキング実験をもとに、探索することとした。その結果、約7万化合物ライブラリーから、約200化合物を候補化合物と取得することができた。また実際にその一部の化合物についてi-motifへの安定化を評価した結果、約50化合物をi-motifリガンド候補化合物として取得することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
C-C塩基対を標的とするi-motifリガンドの創製について、DNA高次構造の一つであるグアニン四重鎖に対するリガンド創製研究で既に我々が得ている知見をもとに、新規化合物を設計し、その設計指針に基づき系統的に化合物を合成した。その結果、これらの中から、2化合物が顕著なi-motifへの選択的安定化能を有することが明らかとなった(FRET)実験。 またグルーブを標的とするリガンドの探索について、インシリコでのドッキング実験を活用することで、リガンドリード骨格(化合物)の取得に成功した。 i-motifリガンドの探索を上述した2つの異なる方針で研究を進めているが、いずれの方針からも、リード骨格の取得に成功しており、当初の計画とおり研究は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
C-C塩基対を標的として得られたi-motifリガンドのリード化合物に関して、CDスペクトル測定、Foot printingアッセイ、NMR実験をそれぞれ行うことで、i-motifとの相互作用様式を明らかにする。得られた結果をもとに、より強力かつ選択的なi-motifリガンドへの創製を検討する。 グルーブを標的としたリガンド探索により取得されたリード骨格について、より詳細にi-motifの安定化能を検討する。具体的には、FRET測定による種々の配列間での選択的な安定化能を評価する。さらに良好な選択的安定化能を示した化合物類に対し、CDスペクトル測定、Foot printingアッセイを行い、i-motifとの相互作用様式を明らかにする。またこれらの過程で見いだされる選択的i-motifリガンドに対し、リード骨格をもとにした構造展開を行い、より選択的なリガンドの創製を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度獲得したi-motifリガンドに対して、当初NMR実験により結合様式の解析を行うための消耗品費用(DNA)を計上していたが、当該DNAが特殊で、納入時期が遅れた。 このため、当該費用を次年度に繰り越すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
現在、継続してDNAを注文中である。納入後、直ちに当初予定していたNMR実験を検討する。
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