研究課題
本研究の目的は、転写因子Hes1の振動を制御する小分子化合物を創製し、細胞分化を操作することである。抑制型転写因子Hes1の発現は幹細胞で振動しており、その振動が未分化状態と幹細胞の不均一性に重要である。その発現振動の原因は、Hes1自身がHes1の転写を抑制していることにある。Hes1の転写抑制機能を阻害する化合物があれば、Hes1の振動発現を外部から自在に止めることができる。また、Hes1は癌に関わるnotchシグナルの最下流であり、癌治療に新しい考え方を提供するとも期待できる。これまでの研究により、D8Cと名づけたプロトタイプ化合物を見つけ出し、低濃度(nMオーダー)で効果のある誘導体JI051を見つけた。27年度は、JI051のメカニズム解析を行った。その結果、以下の成果を得た。● JI051はHes1のコリプレッサーTLE1の制御因子であるBit1をミトコンドリアから放出させ、Hes1とTLE1を核外へ追い出すことが分かった。● JI051の化学プローブを利用して、JI051のメカニズムを解析した。その結果、ミトコンドリアタンパク質であるProhibitin 2が標的であることが示唆された。● siRNAによりProhibitin 2をノックダウンすると、JI051によるHes1の核外追い出しが弱くなった。Prohibitin 2がJI051の標的である可能性が高い。●JI051はProhibitin 2に結合してミトコンドリアの状態を変調させ、Hes1を核外へ追い出すことで、Hes1を阻害していると考えられる。
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J. Am. Chem. Soc.
巻: 137 ページ: 15859-15864
10.1021/jacs.5b10162
巻: 137 ページ: 15624-15627
10.1021/jacs.5b09817
http://www.scl.kyoto-u.ac.jp/~uesugi/