内包した薬剤を患部まで送達し放出するナノキャリアシステムは、最小量の薬剤投与による最大の薬効発現ならびに副作用の低減が期待され、がんに代表される重篤な疾患の治療に応用されつつある。しかし、内包された薬剤の放出が不完全なために、患部への集積が達成されたにも拘らず、期待された薬効が得られない場合が多い。 本研究では外部刺激としてのX線照射に応答して薬剤を放出し得るナノドラッグキャリアシステムを構築することを目的として、高い還元特性を持つアゾベンゼン誘導体をX線応答部として持つ会合体を設計した。 水溶液中で会合する特性を持つ両親媒性化合物としてアゾベンゼン含有DNA (DAM-Azo)を合成した。続いて、DAM-Azoに疎水性化合物が内包されるかを、ピレンの蛍光スペクトルにより観察した。その結果、臨界会合体形成濃度が約200Mとされる会合体を形成することが明らかとなった。また、ピレンを内包するDAM-Azo会合体の水溶液中に100GyのX線を照射したところ化合物が分解され、内包したピレンが放出されることを確認した。
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