研究課題/領域番号 |
26560449
|
研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
難波 康祐 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (50414123)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | ケミカルバイオロジー / 1,3a,6a-トリアザペンタレン / 蛍光プローブ / チオール標識 / システイン標識 / グルタチオン標識 |
研究実績の概要 |
前年度までに、1,3a,6a-トリアザペンタレン (TAP) の光照射による分解性を精査し、TAPにアルキル基を直接連結した誘導体が光照射による分解が最も早いことを見い出した。現在、TAPの光分解によって生じるナイトレンを補足する検討を行っている。一方、光照射に最も安定な官能基がケトンであることを見いだし、ケトンで連結したTAP誘導体を最小の蛍光標識試薬として展開した。すなわち、チオールのみが選択的に付加反応を起こすビニルケトン型のTAP誘導体 (TAP-VK1) を開発し、TAP-VK1が種々のチオールと高収率で反応することを明らかにした。また、TAP-VK1は、チオールが付加することによって、その蛍光強度が10倍以上に増強されることから、標識化が進行したことを蛍光で確認できる優れたチオール標識基であることが分かった。また、TAP-VK1は水中でも種々のチオール残基と収率よく反応し、システインやグルタチオンを水中で効率良く標識できた。さらに、システインを有する8残基ぺプチドにおいても、システイン残基のみを定量的に標識することが明らかとなった。現在、この新規チオール標識試薬TAP-VK1を用いてタンパク質および機能性ペプチドの標識化を検討中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度までに、アルキル基で連結した1,3a,6a-トリアザペンタレン (TAP) 誘導体が光照射による分解が最も早いことを見い出している。その一方、本研究課題の検討からビニルケトン型の安定な新規蛍光標識基が開発されたため、前年度ではこのチオール標識試薬の開発に重点が置かれた。これはビニルケトン型のチオール標識基 (TAP-VK1) が極めて興味深い蛍光特性を示していたために、いち早くその一般性と基質適用範囲を調べる必要があったためである。既に、TAP-VK1の蛍光特性や基質適用範囲は明らかとなっており、また生体機能分子の標識へと展開もしていることから、今年度では、再度ベンゼン環直結型のTAPとアルキル基で連結させたTAPを共存させたハイブリット型蛍光標識の作製を試みる。
|
今後の研究の推進方策 |
研究計画に則り、今年度中にハイブリット型光親和性標識基の合成を達成する。ついで、合成した発蛍光型光親和性標識基が実際にタンパク質とのクロスリンクに適用可能であるかを確かめる。受容体が既知の colcemid およびcholic acidにTAP 型標識基を導入し、標的受容体を直接的・選択的に標識できるかについて検証を行う。また、これと平行して、新たに見いだされたTAP-VK1を種々の機能性生体分子に導入し、実際に生きた細胞内での挙動追跡に適用可能かについても検討を行う。この検討は、TAP-VK1を導入した生体機能分子を共同研究先に提供することによって行われるため、本来のクロスリンク試薬の開発には支障をきたさずに進行できる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
繰越分については、次年度の開始時期において迅速に使用可能であるため、4月に使用する消耗品等に用いた。
|
次年度使用額の使用計画 |
繰越分については、4月中に使用する試薬・溶媒などの消耗品にあてる。
|