研究課題
前年度までに、独自の蛍光分子1,3a,6a-triazapentalene (TAP) を基盤として、最もコンパクトなチオール標識試薬TAP-VK1を開発した。今年度では、TAP-VK1の一般性とチオール特異性の精査を行い、TAP-VK1が幅広い基質適用範囲を有すること、また分子内に様々な官能基を有する基質においてもチオールのみを選択的に標識できることを明らかにした。さらに、TAP-VK1はチオール基と反応した後に蛍光を大幅に増強させることから、チオールセンサーとしての機能も有していることが明らかとなった。この性質を利用して、細胞内での染色実験や気体に含まれるチオール成分の検出などにも適用可能であることを明らかにした。一方、光照射によりナイトレンを発生させる TAP の誘導体探索を引き続き行った。その結果、ナフタレン環に直結したTAPが、光照射により容易にナイトレンを生じることが明らかとなった。容易にナイトレンを生じる基質は、365nmの光照射により白色蛍光を示した。すなわち、白色蛍光体は、424 nmと576 nmの二つの蛍光極大を有しており、これらの蛍光が可視光領域をカバーしているため白色となる。このうち、576 nmの蛍光は連続的な光照射と共に消失し、424 nmの蛍光極大を持つ化合物へと収束した。以上より、白色蛍光から青色蛍光への変化を追跡することで、ナイトレンの発生を肉眼で観測できる光親和性標識基となることが示唆された。今後は、ナフタレン直結TAPから生じたナイトレンを他の分子で補足することが可能かについて検証を行う予定である。
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