研究課題/領域番号 |
26560453
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
和田 章 独立行政法人理化学研究所, 長田抗生物質研究室, 専任研究員 (90443051)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | マラリア |
研究実績の概要 |
ハマダラカが媒介するマラリアの感染は、世界100カ国以上で確認されており、年間で約2億人が感染し、毎年約55万人以上が亡くなっていると推算されている。また、現在のマラリア治療薬としては、アルテミシニンやクロロキンなどが利用されているものの、他の感染症の治療薬に比べて種類が少ないだけでなく、それらに対する薬剤耐性マラリアが世界中で蔓延していることから、これまでにない作用機序で薬理効果を発揮する新たなマラリア治療薬の開発が必要不可欠となっている。近年、マラリアに感染した赤血球内の金属イオンの濃度が、正常な赤血球内と比べて顕著に上昇する現象が明らかとなった。つまり、マラリアは、赤血球内の限られた栄養分を最大限に利用するため、増殖に必須な金属イオンを積極的に収集する仕組みを構築していると推測される。そこで、本研究課題では、マラリアの増殖に関与する金属イオンの濃度を特異的に制御する分子リガンドを独自に探索もしくは合成し、新たなマラリア増殖阻害剤として開発することを目的としている。特に、当該年度は、金属イオンに対して親和的相互作用を有すると考えられる数十種類の分子を収集すると共に、その中から、マラリアのLDH(乳酸脱水素酵素)の活性を指標に、マラリアの増殖阻害を発揮する分子リガンドの探索を実施した。その結果、目的の増殖阻害活性を発現する数種類の新規分子見出すことに成功すると共に、それらに関連する特許の出願にも至っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度では、これまでの知見を基に、金属イオンに対して親和的相互作用を示すと考えられる様々な分子を小規模ではあるが収集した。そして、その中から、赤血球に感染したマラリアのLDH(乳酸脱水素酵素)の活性を指標にして、生理条件においてマラリアの増殖阻害を発揮する分子リガンドの探索を実行した。その結果、目的の増殖阻害活性を発現する新たな分子を発見することに成功しただけでなく、それらに関連する特許の出願にも至ることができた。それゆえ、本研究課題は、おおむね計画通りに進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、今回発見することに成功した「マラリアの増殖阻害活性を発現する新規分子」に焦点を絞り、有機化学的手法により、それらの誘導体合成を試みる。さらに、ヒト正常細胞などに対する細胞毒性を評価すると共に、マラリア感染マウスへの投与と生体内における薬理効果・薬物動態などを解析することで、これまでに例のないマラリア治療薬の候補としての価値を見出すことを目指す。そして、これまでに得られた研究成果は、シンポジウム・学会・研究会などで発表するだけでなく、論文化および特許化も視野に入れて取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度では、金属イオンに対して親和的相互作用を示す数十種類の分子群の中から、マラリアの増殖阻害を発揮する分子リガンドの探索を実行したところ、目的の増殖阻害活性を有する新たな分子を発見することに成功した。そして、今回、大きな問題も生じることなく、予想よりも効率的に目的の新規分子を見出すことができたことから、実験に必要となる試薬等の購入費の使用を抑えられたため、未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額の使用計画としては、今年度の未使用分と合わせた次年度の研究費を利用して、マラリアの増殖阻害活性を発現する新規分子の誘導体合成に必要な試薬や溶媒、それらの正常細胞に対する毒性の評価やマラリア感染マウスにおける薬理効果などを評価する試薬や材料を購入し、本研究課題の目標を達成できるように取り組む。また、本研究課題で得られた研究成果を国内外のシンポジウムや学会などで発表するための旅費や、誌上発表のための論文投稿費などとしても使用していく計画である。
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