研究課題/領域番号 |
26560454
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
田中 真樹 北海道大学, 医学研究科, 教授 (90301887)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 定位照射 / 深部脳破壊 / 脳機能評価 / 動物モデル / 霊長類 / 眼球運動 |
研究実績の概要 |
脳の損傷例を対象にした神経心理学研究や、脳の一部を可逆的・不可逆的に障害した実験動物の行動解析は、脳の機能を知るための最も基本的かつ重要な研究手法である。しかし、臨床的にみられるような数ミリ~数センチメートルにおよぶ比較的広範な障害を脳深部に作成することは技術的に困難である。本研究では、がんの治療に用いられているX線定位照射装置(LINAC)を利用して、ヒトと相同の脳をもつマカクザルの脳の特定部位に破壊巣を作成することを試みる。 平成27年度4月にこれまでに照射を行った個体のデータの一部についてまとめた論文を発表した。平成27年度に照射装置の置かれているアイソトープセンターの増改築工事があり、新たな照射を行うことができなかったため、先の論文の査読過程で解析の不備を指摘された病理所見について追加的な検討を行った。また、脳の局所障害の評価に用いるための行動課題の開発と誘発電位記録を試行するとともに、硬膜外電極の埋設にむけた準備を進めている。行動課題としては、同期的眼球運動や新しい小脳学習パラダイムなどを開発し、一部は学会等で発表した。また、サルとヒトの頭皮上から逸脱刺激に対する誘発電位を記録することに成功した。これらは定位照射による脳障害によって変化することが期待され、その評価に用いることができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は増改築工事のために新たな照射ができなかった。ただし、現有のデータ解析と新たな行動課題の開発、電気生理学的な指標の検討を行った。また、平成26年度に導入された3TのMRIを駆使して多数のサルの3D脳画像を取得した。これらの技術やデータベースは今後の解析に生かすことができる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに開発した行動課題をもとに、脳障害の評価を試みる。先の照射後のMRI解析、病理組織解析により、壊死に至るまで時間がかかること、局所的な照射は線量が多いと難しいことが明らかになった。局所的な脳障害を作成する技術を開発することが本研究の目的であるので、X線定位照射によるものと他の方法によるものの比較が必要であると考えている。薬物注入や電気凝固では難しい脳深部の数ミリメートル以上の破壊巣を作成する新しい手法として、化学遺伝学の技術をサルに適用した論文が平成28年1月に米国から発表された。先のX線照射によるものとの比較検討のため、現在、共同研究を通じてその適用の可能性を探っており、平成28年度中に試行できればと考えている。これらの実験のため、上述の行動課題の開発、電気的指標の確立を急ぐとともに、年度内に新たな実験動物を調達とし、長期飼育のための設備の確保を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月中に購入したものが4月支払いになったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に購入した下記物品の支払いに充てた(合計額 43,919円) ラテックス手袋19,628円、フリーボックス5,100円、パントテン酸2,930円、論文投稿料 16,261円
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