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2015 年度 実施状況報告書

高速トラッキング顕微鏡を用いた神経微小領域の活動計測

研究課題

研究課題/領域番号 26560459
研究機関名古屋大学

研究代表者

塚田 祐基  名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (80580000)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード探索行動 / 神経 / カルシウムイメージング
研究実績の概要

前年度までに開発した高速トラッキングシステムを用いて、行動中の細胞局所的な神経活動の計測を進めた。遺伝的にコードされた蛍光カルシウムプローブであるGEM-GECOを用いた高速トラッキングを実施し、行動中のAIY介在神経細胞の活動計測と、そのときの行動変化を解析した。計測を実施する過程で、GEM-GECOの励起に必要な短波長の光が行動に影響する可能性も確認されたため、GEM-GECOに加えて、新しく開発された、遺伝的にコードされたカルシウムプローブであるYCXを導入し、AIY神経細胞でのみYCXタンパクを発現する系統の作成と、その系統を使ったカルシウムイメージングも実施した。YCXは以前からあるcameleonと同様に蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を利用したプローブであるが、cameleonよりもシグナルノイズ強度比が高く、GEM-GECOと比べて長波長の励起光を用いるため、生体への毒性が少ない。また、GEM-GECOと同じくレシオメトリックな測定系であるため、計測対象の動きによるアーチファクトやシグナルの減衰が少ない。これを用いて、より自然な状態で行動と神経活動の計測を行い、AIY介在神経細胞の活動がどのように行動に関わっているか、検証を進めた。また、昨年度に導入した高速にON/OFF制御が可能なLumencore照明について、プログラムによって制御する環境を整え、様々な強度、時間幅で光刺激を与えることを可能にした。成果発表としては高速トラッキングシステムでの計測、解析の基盤となる別のトラッキングシステムでの研究結果をthe Journal of Neuroscience誌に発表した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

行動中の神経活動を蛍光プローブで計測するための高速トラッキングシステムのハードウェア、ソフトウェアを整備し、Lumencore照明など光学系の調整、そしてカルシウムプローブを測定対象である介在神経細胞などに発現させた線虫系統の作成などを進め、行動中の特定の神経細胞における軸索などの局所部位の蛍光カルシウムイメージングを線虫が自由に行動できる温度勾配上で行えることが確認された。さらに画像解析、行動解析のプログラムを作成することで、蛍光イメージングにより得られた画像から特定の部位の蛍光強度を抽出し解析することを可能にした。
介在神経細胞の機能を調べるために神経活動を制御する方法としては、オプシンを用いた光制御の実験系を整備し、加えてヒスタミン依存性ClイオンチャネルHisCl1とヒスタミンを用いた、細胞、時期特異的な化学抑制方法の実験系も整備した。現在対象としているAIY介在神経細胞やRIA介在神経細胞は後退などの劇的な行動変化でなく、定量的な解析が必要な行動変化に関連することがわかってきたため、より定量的な解析を進める実験計画、解析方法の検討を進めている。また、AIY介在神経細胞、RIA介在神経細胞の活動は確率的な振る舞いを見せており、同じ刺激に対しても施行ごとに異なる応答を見せつつ、分布として再現性があることも分かってきた。そのため、この確率的な性質を捕らえるための実験計画と、数理的な解析方法も検討している。

今後の研究の推進方策

当初計画通りの神経活動の計測、オプトジェネティクスによる神経活動の制御に加えて、化学物質による神経活動の制御であるHisCl1も合わせて用いることで、介在神経細胞の機能解明を目指す。オプトジェネティクスの場合もヒスタミン-HisCl1システムの場合も、自由行動中の個体において、介在神経細胞の活動を阻害した場合にどのような行動の異常がでるかを中心に解析を進める。これまで中心的に進めてきたAIY介在神経細胞に加えて、その上流であるAFD感覚神経細胞と、その下流であり運動神経細胞により近いRIA介在神経細胞も対象として神経活動の制御と計測を進める。AFD神経細胞における活動計測は最近発表した論文にもちいた実験系を用い、HisCl1やオプトジェネティクスを用いた神経活動の制御と組み合わせて実験を進める。AFD感覚神経細胞の活動が高くなったときに方向転換の頻度が増加することはこれまでの研究でわかってきたが、AIY介在神経細胞の活動変化は方向転換の頻度とは必ずしも一致しない。AFDやRIAなどの周辺の神経活動の計測・制御を進めることで、感覚神経細胞のシグナルがどのように介在神経細胞へと伝達し、行動とどのように介在神経細胞の活動が関係するかを検証する。また、本研究で開発した手法が他の神経細胞の研究でも使えるように、実験系や画像解析のプログラムを修正し、一般化を進める。介在神経細胞の機能について明らかになった知見や、これらの技術的な進捗は積極的に公表し、専門家と議論することでさらに発展させる。

次年度使用額が生じた理由

効率的な経費の利用をするために、消耗品などの消費量にばらつきのある物品の購入を無理やり年度内に収めず、次年度に持ち越すことで無理のない適切な購入をしたため。

次年度使用額の使用計画

研究計画にある線虫をもちいたカルシウムイメージングやオプトジェネティクス実験を行うため、実験に必要なプレートや、培地を作成するための試薬を購入する費用に充てる。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Reconstruction of spatial thermal gradient encoded in thermosensory neuron AFD in Caenorhabditis elegans.2016

    • 著者名/発表者名
      Tsukada, Y., Yamao, M., Naoki, H., Shimowada, T., Ohnishi, N., Kuhara, A., Ishii, S. & Mori I.
    • 雑誌名

      The Journal of Neuroscience

      巻: 36(9) ページ: 2571-2581

    • DOI

      10.1523/JNEUROSCI.2837-15.2016

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Quantification and reconstruction of thermosensory neuronal processing in C. elegans2016

    • 著者名/発表者名
      Yuki TSUKADA
    • 学会等名
      NIG International Symposium 2016 Force, Information and Dynamics: X factors shaping living systems
    • 発表場所
      東京大学生産技術研究所
    • 年月日
      2016-01-10 – 2016-01-10
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Neural encoding of thermotaxis behavior in C. elegans2015

    • 著者名/発表者名
      Yuki TSUKADA, Naoki Honda, Masataka Yamao, Shin Ishii, Ikue MORI
    • 学会等名
      Neuro2015
    • 発表場所
      神戸国際会議場・神戸国際展示場
    • 年月日
      2015-07-29 – 2015-07-29
    • 国際学会
  • [図書] ImageJではじめる生物画像解析2016

    • 著者名/発表者名
      三浦 耕太, 塚田 祐基(編著)
    • 総ページ数
      295
    • 出版者
      学研メディカル秀潤社

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公開日: 2017-01-06  

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