研究課題/領域番号 |
26560465
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松本 理器 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00378754)
|
研究分担者 |
國枝 武治 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (60609931)
下竹 昭寛 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80726000)
井内 盛遠 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30532600)
小林 勝哉 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 医員 (70737121)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 脳機能計測 / 皮質間結合 / 皮質皮質間誘発電位 / 高周波律動 / 皮質電気刺激 / 睡眠 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、難治部分てんかんの焦点摘出術の術前評価のために硬膜下電極を慢性留置する患者で、研究への参加の同意を得た患者複数名において、術前の安静時機能的MRI(rs-fMRI)および拡散強調画像撮像を行うとともに、単発電気刺激による因果性を持った皮質誘発反応(CCEP)を様々な脳領域で睡眠時も含めて計測した。脳腫瘍の覚醒下手術をおこなった症例を対象に、術前の解剖学的白質線維追跡から推定された背側言語白質経路(弓状束)を単発刺激し、計測された皮質誘発反応の分布から弓状束の両端を担う皮質の特定に成功した。包括的なCCEPデータの解析から、皮質誘発反応として律動性応答を示す脳特異領域があることを見いだし、国内学会(口演)で成果発表した。また、一次体性感覚野で導出したCCEPと体性感覚誘発電位において、それぞれに関連した高周波律動の主たる周波数帯域が異なる(前者が80-160 Hzで後者は200 Hz以上)ことを明らかにした。本内容は国内学会(ポスター)にて発表し、現在国際英文誌に投稿中である。 さらに、「意識の消失は情報統合量の減少によって生じる」という情報統合理論の観点から、単発電気刺激で誘発される高周波律動を統合情報量の指標として、生理的意識変容である睡眠において、睡眠深度による局所・ネットワークレベルでの情報統合の変容を12人の患者において各睡眠段階(覚醒、ノンレム睡眠、レム睡眠)で比較検討した。その結果、睡眠時の皮質間結合性・興奮性が睡眠ステージ依存性に動的に変容し、ノンレム睡眠は覚醒時より抑制されやすいこと、レム睡眠は両者の状態の中間に位置すること、さらにそれらの動態は脳葉により異なることを、ヒト脳で初めて明らかにした。本内容は今年度の国内学会(口演)にて発表し、現在国際英文誌に投稿中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
電気刺激による誘発脳律動(CCEP)の記録・解析に関しては、解析対象とする周波数帯域を広げるとともに、統計解析手法の改善を行い、脳律動現象と脳内ネットワークの全体像の把握を確実に行うこととした。これにより解析は順調に進んで、学会での発表、学術誌への投稿に至っており、ヒト脳機能結合地図の解明に向けて成果を上げていると考えている。一方、膨大なデータを蓄積しつつあるrs-fMRIを用いた自発脳律動に関しては、解析手法を試行錯誤して妥当な方法を模索している段階である。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き症例を蓄積し、包括的なヒト脳機能地図作成のため、合計15名以上の患者のリクルートを目指す。解析に関してはrs-fMRIにも注力してBOLD信号の相関解析を進めCCEPで同定された皮質間機能的結合との共通性・差異を明らかにする。さらに術中白質刺激を行う症例を蓄積し、直接の皮質―白質―皮質結合を同定できたネットワークに関して解析も進め、rs-fMRIとの比較検討を行ってrs-fMRIによる皮質間機能結合の経路の解明を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
多数症例で系統的に大脳皮質に単発刺激を与え直後からの誘発脳活動計測するためには、電気刺激用チャネル切り替えボックスに加え、時定数回路が調整・変更された脳波アンプシステムが必要である。このシステムの確立のために研究費を用いる予定であったが、機器作成に時間がかかるため、次年度に繰り越すこととなった。
|
次年度使用額の使用計画 |
昨年度購入予定であった、時定数回路が調整・変更された特注の脳機能マッピング用脳波アンプシステムは、部品調達などの観点から早めの発注を予定する。 本年度は、本研究計画をさらに遂行するため、脳深部を含めた多点記録が可能なステレオ脳波の技術習得のため、国際ワークショップへの参加を予定する。また昨年度に引き続きrs-fMRIとCCEPの各データの収集の継続、相関の解析と、学会での研究成果の発表を行う。具体的には、データ解析のためのコンピュータ・ハードディスク(設備備品費)、画像・脳波解析ソフトウェア(消耗品費)の購入と、研究成果発表のための旅費(外国旅費・国内旅費)、学術論文投稿費用を予定する。
|