研究実績の概要 |
我々は、小脳、大脳基底核など脳深部神経回路のin vivo imagingを実現するために顕微内視鏡システムを開発し、これを用いて自由行動中のマウスから脳深部神経回路の細胞レベルのin vivo imaging観察法を確立した。さらに線条体の直接路及び間接路投射ニューロン(dMSN, iMSN)それぞれにプロテインキナーゼA(PKA)あるいは細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)の活性をモニターできるFRET バイオセンサーを発現させたマウスを作製した。さらに、これらマウスを用いて、行動開始や行動選択に重要と考えられている背側線条体に上記顕微内視鏡を留置して様々な行動パラダイム(コカイン投与、電気ショック、オスマウスのmating行動)でのdMSN, iMSNのPKA,ERK応答を観察した。今年度はさらに、DREADD法を用いて強制的にdMSN、あるいはiMSN特異的にcAMPを変化させ、それによるPKA変化とオスマウスの生殖行動変化を観察した。結果、DREADD法によるcAMP変化に応じて、自由行動中の顕微内視鏡からの記録でもcAMPを上昇させるとPKAは活性化し、逆に減少させると不活性化を示すことを確かめた。そして、これらPKA変化と呼応するようにオスマウスはmating行動の積極性を変化させた。以上より、行動選択と線条体直接路・間接路投射ニューロンのPKA応答とのcausal linkageを確認した(Goto et al, PNAS, 2015)。 さらに、上記と同様の手法を用いて側坐核での忌避記憶形成におけるdMSN,iMSNのPKA応答の役割を調べた。結果、忌避記憶形成に必須と思われたiMSNのPKA応答は、忌避刺激(電気ショック)を受けた直後ではなく、10分程度経てから徐々に現れることを明らかにした(Yamaguchi et al, PNAS, 2015)。
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