研究課題/領域番号 |
26570005
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
住村 欣範 大阪大学, グローバルコラボレーションセンター, 准教授 (30332753)
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研究分担者 |
思 沁夫 大阪大学, グローバルコラボレーションセンター, 特任准教授(常勤) (40452445)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 食品保存 / 照葉樹林 / 近代化 / 安全 / フードチェイン / 技術 / ベトナム / 人類学 |
研究実績の概要 |
本研究は、照葉樹林文化帯における食品の保存について、ベトナム北部、雲南、日本において現地調査を行ってデータを収集し、近代化の視点からこれを比較分析した。本研究が対象とする、照葉樹林文化帯においては、自然環境と人間とのやり取りの間に、食に関する基層文化が生み出されてきた。しかし、近年は、近代化の過程において、食品保存の技術、食品の多様化および流通、食品保存の意味の3 つ枠組みにおいて、大きな変化がみられるようになっている。 照葉樹林文化圏の近代化過程において、食品保存の技術は、地域の資源や味、文化的な必要性と複合したものから、食品の「安全」だけに基づいた単機能的なものに変化していることが明らかになった。 また、4つの動物性食品に関するフードチェインを実地調査によって地域ごとにモデル化し、フードチェインのどのようのポ イントでどのような技術が用いられているかを明らかにした。その結果、食品の多様化と流通網の複雑化が起こる中で、単機能的な食品保存は、流通システムの中で局地的に分断された文脈で開発され、総体的な「安全」に寄与しない場合があることも解明された。 現在の日本における食品保存の基本は、冷凍・冷蔵であるが、ベトナムにおけるの冷凍・冷蔵は、貧弱で徹底していない。一方で食品流通の範囲は拡大し続けており、流通の拡大とインフラの整備の間で、至る所で齟齬が起こってきている。このような状況に対して、生産や流通に携わる当事者は、抗菌剤を流通過程の食品に保存用として使用するなど、従来とは異なる「 保存」の方法を実践するようになっている。 以上のような傾向は、本研究課題の対象地域である雲南、ベトナム北部、日本に共通してみられるが、国際的な食料供給体制の中で、準周縁的な地位に置かれている地域に、より顕著であることも明らかになった。
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