研究課題/領域番号 |
26570010
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
藤倉 良 法政大学, 人間環境学部, 教授 (10274482)
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研究分担者 |
藤倉 まなみ 桜美林大学, 総合科学系, 教授 (30458955)
豊田 知世 島根県立大学, 総合政策学部, 講師 (30550016)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 移転補償 / 住民移転 / 費用 / インドネシア / トルコ |
研究実績の概要 |
トルコ南東アナトリア計画によって建設されたアタチュルクダムによって移転を余儀なくされた住民の生活再建状況については、現地の治安情勢悪化から追加調査はできなかったが、過去に行った調査データを分析した。ダム近傍のアディアマン地区と水没地から900キロ西に離れた地中海に面するヤリキョイ村に移転した住民に対するアンケート調査結果を比較分析した。前者は移転に伴い所得を減少させたが、後者は増加させた。また、後者の増加額は移転前の所得が大きいほど大きくなったことが明らかになった。その結果、後者の満足度が前者と比較すると有意に高いことが明らかになった。 ヤリキョイ村への移転民は、当初、周辺地域の住民と異なる言語(クルド語)を話すため第一世代は孤立した生活を送っていたが、第二世代以降は言語の問題もなくなり、近傍都市に就職できるようになった。また、政府が建設した移転住宅を移転民はローンで購入したが、ハイパーインフレーションにもかかわらず、政府が価格を据え置いたため、住民は結果的に極めて安価に購入ができたという幸運も満足度に大きく寄与した。 インドネシア、コタパンジャンダムの建設によって13カ村が移転し、そのうちの12カ村に居住する移転住民310世帯を対象として、移転補償額等の聞き取り調査を行った。合わせて移転前の不動産及び移転補償対象の動産の評価額を推定した。その上で移転補償に係る総費用の見積もりを行い、約1,400億ルピア(約14億円)と推定した。これはダム建設総費用の33%に相当する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
インドネシア、コタパンジャンダムの移転村に至る道路が土砂崩れによって長期間通行不能になったため、平成27年度に予定していた現地調査の実施が大幅に遅れ、完了したのは平成28年11月になった。このため、調査結果の解析と論文執筆が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
公式に発表されているコタパンジャンダムの建設費と平成28年度の調査で得られた移転補償額、移転前の不動産及び移転補償対象の動産の評価額をもとに同ダムの内部収益率(IRR)の算出を試み、論文執筆を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
インドネシア。コタパンジャンダムの移転村に通じるアクセス道路が土砂崩れで長期間不通になったため、現地調査が遅れたため。
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次年度使用額の使用計画 |
コタパンジャンダムの建設費は国際協力銀行(JBIC)やインドネシア政府から公式に発表されている。これらのデータはすでに入手済みであり、それと平成28年度の現地調査で得られた移転補償額、移転前の不動産及び移転補償対象の動産の評価額をもとに同ダムの内部収益率(IRR)の算出を試みる。そして、住民移転の真のコストを反映させた大型ダムのIRRと公式発表のIRRとを比較し、再生可能エネルギーの真の効率性を評価する。
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