本研究は、近代化が急速に進みつつあるブータンにおいて、日本で開発された地元学手法を援用することによって、ブータンの若い世代が多世代にわたって継承してきたブータン独自の生活様式や社会システムの在り方に目を向けるきっかけを与え、ブータン社会の特質を生かした近代化推進のための担い手として育つことを研究の目的としてきた。また、村落住民が外部者の視点によって刺激を受け、コミュニティの持つ魅力や資源に気づき、住民主導の地域づくりに向かうきっかけとなることも目指している。そこで、ブータンの次世代の社会の担い手づくりを支援するNPOのBCMD (Bhutan Media and Democracy)とブータン王立大学と共同で、「地元学手法」を用いたコミュニティマッピングプロジェクトの共同研究を進めた。フィールドにおいては、ティンプー県のKabesa村とプナカ県のGemkha村落でパイロット研究を計画(平成27年度)し、実施(平成27年度と平成28年度)することができた。平成28年度は、計3回 にわたるフィールドにおける共同研究の知見を踏まえて、若者のコミュニティマッピングプロジェクトが参加学生と村落地域に与える影響に関するアクションリサーチの論文を作成、2016年9月には、HDCA(Human Development and Capability Association) 学会にて研究報告を行い、研究者の関心を集める事ができた。2017年9月には、ブータン社会の担い手づくりに関心を持つパロ県と共同で次世代の社会改善実践セミナーをパロ市で開催し、本研究の知見をブータンの地域社会改善に直接活用する機会を得るという成果となったのは特筆される。
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