本研究は、「支配した側」に置かれた女性が「支配された側」に対する「植民地責任」をどのように、どこまで認識できたか、そして、それを広く発信し共有できたかを考察することにあった。3か年の研究をとおして、旧英領西インド・ドミニカ島出身の英系白人(クリオール)女性、ジーン・リースとフィリス・オーフリーの生涯と文芸作品を取り上げ、同時代の政治的・文化的状況を示す多様な資料とともに考察することで、故郷への愛着と、本国イギリスとイギリス人への懐疑的姿勢を明らかにできた。脱植民地に向かう過程で、彼女たちの「西インド人」としての自己認識が、島民とのあいだに齟齬を生み出すようになっていった状況も解明できた。
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