研究課題
津波被災地である岩手県沿岸部の一地区を定点として、被災者の生活実情を調査し、それに基づいた減災方策を検討した。方策の一部については「減災セミナー」などにおいて発表した。調査方法は以下である。本研究期間において、被災者(仮設住宅入居者)と協働して年に4回「復興市」を開催し、被災者の生活実情を参与観察した。平成28年度には過去2年間の参与観察を基に、地域の全世帯対象のアンケート調査を実施した。本研究期間の3年間で徐々に震災復興も遂行され、その推移に伴って、高台移転、災害復興住宅入居、地域のインフラ整備などの意思決定を誰がどのように行っているのか、家族内での関係性の変化も含めて刻々と変化し、丁寧な分析が必要であることが分かった。具体的には以下である。被災者の経済格差は生活の変化要因となるだけではなく、「新たな分断」が派生すること、中堅世代は生活再建のために職業生活中心の暮らしを行い、そのことが地域の諸活動への参画を難しくしていること、男性より女性の方が被災前の生活への「見切り」をつけ易いこと、「分断」を乗り越えるためには、さまざまなイベントや小集団による活動が有効であることが明らかになった。「復興市」を行う中で多世代共生の芽が生まれること、地域の教会が被災者支援を契機にフィリピン出身の花嫁さん(女性)たちの仲間作りの役を果たすなど、震災の中での「分断」だけではなく、「共同」も生み出されていることが分かった。また、古い人間関係が復興過程への女性の参画を疎外することが明らかになった。
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