研究課題/領域番号 |
26570021
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
岡野 八代 同志社大学, グローバル・スタディーズ研究科, 教授 (70319482)
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研究分担者 |
野口 久美子 明治学院大学, 国際学部, 講師 (00609571)
合場 敬子 明治学院大学, 国際学部, 教授 (50298056)
影山 葉子 静岡県立大学短期大学部, その他部局等, 助教 (50566065)
内藤 葉子 同志社大学, アメリカ研究所, 嘱託研究員 (70440998)
石井 香江 同志社大学, グローバル地域文化学部, 准教授 (70457901)
牟田 和恵 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (80201804)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 女性の身体 / ケア / 看護実践 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、①身体論の理論的研究、②女性の身体の両義性を明らかにする研究、③ケア実践における経験のなかで感じられる女性的身体・主体性の研究である。本年度は、3回の研究会を開催し、②については、日本女性学会大会シンポジウム「スポーツにおける男性性の解体」に参加後、「男性性」を理念型として発達してきた近代スポーツと近代性・近代国民性に関する研究会を開催した。また、③については、「ケアの倫理と看護実践」について看護の現場において、患者の家族と看護士の間における、治療決定をめぐる揺らぎに関する報告会を開催した。
研究代表者である岡野八代がケアの倫理と安全保障の論理を対比するなかで明らかにした、傷つきやすい身体へのケアレスな政治理論と、他者からの攻撃に対して過剰に防衛的になる現在の国家主権論との関係については、『戦争に抗する--ケアの倫理と平和の構想』(岩波書店、2015年)として公刊した。本書の公刊を受けて、書評会を開催し、国民国家というマクロなレヴェルにおける具体的な異なりを抱えた身体性への無関心ーーという装いの下での規律化ーーと、主観的な身体性との関係について、今後さらに①の研究を進展させなければならないことが確認された。
さらに本年度の成果として、女性のケア労働・身体的営みと経済的人間(ホモ・エコノミクス)を中心とする経済的社会との軋轢を精緻に論じる必要性が研究会を通じて明らかとなった。また、女性のケア労働の経験を論じる文化人類学的な研究から、男性中心的な視点から論じられてきた贈与論を再検討することで、女性の身体性をめぐる両義性を解き明かすことができるのではないかとの示唆を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の第一の目的である、現象学的な身体論の研究について本年度着手することができなかった。とはいえ、フェミニスト経済学や母系社会を論じる文化人類学の先行研究に出会うことで、これまで母性主義として批判されてきた女性たちのケア労働と贈与論とのつながりを見いだしたことで、新しい社会構想と反暴力的な思想への示唆を得られたことは大きな成果であった。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度に向けて、男性中心的、あるいは身体性から遊離した主体性を、女性たちの具体的な営みから得られた知見・思想から批判するための枠組みを提示する。その成果は、同志社大学アメリカ研究所紀要である『同志社アメリカ研究』53号の特集号として発表予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者の使用額が予定よりも低かったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度においては、必要に応じた研究分担者への配分を心がける。
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