研究課題
本研究の目的は、①身体論の理論的研究、②女性の身体の両義性を明らかにする研究、③ケア実践における経験のなかで感じられる女性的身体・主体性の研究である。本年度は、最終年度として、同志社大学アメリカ研究所紀要『同志社アメリカ研究』の特集号への投稿という形で、研究成果を出すために、論文構想発表会を開催した。共同研究の途上において、ケアの倫理がアメリカ合衆国において登場してくる背景に、60年代の新左翼運動における女性たちの身体的経験(男性からの視線や、運動内における侮蔑)が存在や、マルクス主義における家事労働概念と女性たちの実際の家事労働の経験との齟齬が存在していることが明らかになった。『同志社アメリカ研究』という雑誌の性質上、「「ケアの倫理」からの、合衆国フェミニズムの再構築」という特集号のタイトルとなったが、本研究の目的である、女性の身体と主体性をめぐる特徴を描き出すことができた。特集号では、第一に、医療・看護現場でのケア実践における主体性、自己決定に焦点があてられ、健常者の、とりわけケアする対象から自由な男性が取りうる責任とは異なる形の責任の取り方が浮かび上がった。第二に、合衆国の歴史的文脈において、20世紀初頭の合衆国第一波フェミニズム運動とドイツのそれとの比較研究、第二波フェミニズム運動から派生した理論が1980年代のバックラッシュ以降の進化を経て、現在のネオ・リベラリズムの潮流にも十分耐えうる批判力を備えていたこと、合衆国内における先住民の女性たちが、リベラリズムとは異なる「責任の倫理」や「再生と再来の連鎖」に敏感な実践を行っていたことを明らかにした。また、その他の研究分担者も、それぞれの研究において、女性の身体と暴力に関する研究を公刊することができた。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (1件) 図書 (1件) 備考 (1件)
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