2014年度の研究においては海外のフィールド・リサーチが多くなっていたので、2015年度は国内の視察も多く行った。特に、ホテルのみならず、多くの旅館を対象としてヒアリングや観察法による調査を行うことができたのは有意義であった。対象となったのは、旅館では(1-1)明神館、(1-2)深山桜庵、(1-3)花の丸(海栄RYOKANS)、(1-4)季の湯雪月花(共立メンテナンス)、(1-5)伊東ホテルニュー岡部(大江戸温泉物語)、(1-6)忘れの里雅叙苑、リゾートでは(2-1)天空の森、都市部のホテルでは(3-1)東京ステーションホテル、(3-2)ホテル日航大阪、(3-3)ドーミーイン金沢、(3-4)ドーミーイン熊本、(3-5)アルモニーサンク、である。 上記のホテル、旅館以外でも、多くの施設関係者にもヒアリングを実施した。ヒアリング結果については、専門誌『週刊ホテルレストラン』誌上において、12回にわたって報告を行っている。各旅館とも、お客様と旅館側との関係のみならず、お客様と周辺環境との関係における不確実性にも深く意を注いでいることが理解できた。 また、海外でも香港、マカオ、上海、南アフリカで調査を実施した。香港と上海ではアジアにおける最先端のラグジュアリー・ホテルについて視察を行い、マカオでは複数のIRの見学を行った。南アフリカでは、サファリ・リゾートの経営について多面的に分析を行った。 以上の調査結果を、『ホスピタリティ・デザイン論』(2016年5月刊行予定)という本にまとめた。本書は、ホスピタリティ産業における施設面に焦点を当てて考察したものである。特に、本研究の成果として、ホテルと旅館とが全体の内容の多くを占めるに至った。不確実性がホスピタリティの鍵になるが、一方で施設・設備をはじめとする確実な要素の存在こそが、ホスピタリティ施設においては重要であるという点が明らかとなった。
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