研究課題/領域番号 |
26570029
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
曽我部 昌史 神奈川大学, 工学部, 教授 (00262270)
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研究分担者 |
寺内 美紀子 信州大学, 工学部, 准教授 (40400600)
槻橋 修 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50322037)
福岡 孝則 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60641008)
長峯 純一 関西学院大学, 総合政策学部, 教授 (80189159)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 震災復興 / 観光復興 / 地域社会の持続可能性 / 震災アーカイブ / アクション・リサーチ / 合意形成 |
研究実績の概要 |
本研究は、東日本大震災の被災地・気仙沼大島での活動を通して結成された学際的研究者チームが、現地での住民集会や新聞発行などの支援活動を継続する中で、アクション・リサーチ(以降、AR)という手法を用いた復興まちづくりへの参画とそれを踏まえた持続可能な地域社会モデルの提示を目的としている。2015年度のARも、復興事業の検証や他の離島のまちづくり事例などを参考にしながら、気仙沼大島で住民集会(大島のみらいを考える会)を7回実施すると共に、島民へのニューズレター(大島みらい新聞)を毎月発行し、両活動を中心に観光復興の議論を交わしてきた。まちづくり事例を比較参照するために、和歌山県串本町の紀伊大島と兵庫県南あわじ市および同市の沼島の2か所の訪問調査も行った。前者では、架橋後16年経った観光や地元産業の変化について、また後者では、独自の島文化を持つ離島の観光のあり方と戦没者慰霊施設の公園整備事例を中心に、視察・ヒアリング調査を行った。気仙沼大島でも3年後に架橋が実現する予定であり、島文化と震災伝承を観光復興に活かした復興と持続可能性を考える上で有益な情報が得られた。調査・活動を通して得られた情報は過去2年間で蓄積されており、震災伝承と観光復興については一部の研究成果を論文にまとめられた。一方、地域の持続可能性を評価し地域経営につなげていくための「大島元気指標」や、震災伝承と観光復興をつなぐ震災フィールド・ミュージアム構想については、前年度からの提案に留り、具体的な研究成果の発展には至らなかった。これまでの研究全体の中間成果を総括する形で、2015年9月27日に追手門学院大学で開催された日本公共政策学会関西支部大会で、当研究メンバー全員が参加する「観光復興へ向けた学際的AR」と題するセッションを行った。また2016年3月には、若者雇用と地方創生をテーマに、「復興トークサロン」と題するフォーラムを気仙沼市で行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究2年目となる2015年度は、現地でのアクション・リサーチを通じた情報収集、他地域の事例の検討や訪問調査を通じた情報収集については、順調に進めることができた。とくに現地での住民集会とニューズレター発行については、2015年度も定期的に実施することができ、地域の住民とのある種信頼関係によって、多くの情報を得ることが可能になっている。 しかし、アクション・リサーチの実施自体が時間をとることから、研究成果としてまとめる十分な時間を確保できなかったこと、そして、復興事業も集中復興期間の最終5年目を迎える中で、街や島の復興が実感できるまで実態が変わっていないことから、島民にもまちづくり活動に参加することの徒労感が増しているという問題も発生してきた。そうした問題も考慮しながら、現地の復興状況や住民の関心時に合わせて、アクション・リサーチの活動内容や方法を逐次修正していく必要性も感じてきた。 復興後の地域社会のあり方を議論する前段として、復興事業の進め方自体に問題点が多々存在することを、アクション・リサーチを通じて気づかされてきたが、それらの点を整理した内容を研究成果として学会報告や論文として出すことができた。 地域社会の持続可能性指標、地域経済(観光業と水産業)モデル、サステイナブル・デザインによる地域空間というテーマについては、復興事業を終えた後の地域の将来像とも関係してくる。これらの研究を進める上で、持続可能性指標を用いたモニタリングを試行するという点でも困難にも直面している。 以上、総じて、2年目の研究では、初年度からの継続的活動を計画通りに実施することはできたものの、現地の状況が変化してきている中で、また個別研究テーマを多数掲げている中で、すべてを実施し具体的な成果物としてまとめるところで課題が残ったと言える。
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今後の研究の推進方策 |
2016年度は、研究の最終年度ということもあり、現地の住民たちとの間で構築してきた信頼関係を絶やさないためにもアクション・リサーチを継続したい希望はもちつつも、住民の徒労感も斟酌しながら、現地でのアクション・リサーチはある程度減らし、その代わりに、これまで蓄積してきた情報や知見を具体的な研究成果としてまとめる作業により重点を置く方向で計画を立てている。 観光復興に向けて、現地の自然・産業・土地・文化などのデータを改めて全体的に整理する作業を進め、震災復興と持続可能な地域社会を構築していくためのモデルとなるような制度の提案とその試行を図ることを目指していきたい。 サステイナブル・デザインによる地域空間計画の応用可能性についても、何らかの研究成果としてまとめる予定である。その上で、震災伝承と観光復興をつなぐ震災フィールド・ミュージアム構想と島の自然や文化の観光資源化を図り、観光業と水産業を核とした地域社会の持続可能性モデルを具体的に提案することを目標に、計画的に研究を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
各研究者が効率的に助成金を使用した結果、若干の残額が生じたが、必要な支出は問題なく終了している。
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次年度使用額の使用計画 |
予定しているシンポジウム登壇者の謝金に充てる。
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