研究課題/領域番号 |
26580004
|
研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
松阪 陽一 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 教授 (50244398)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 言語哲学 / 意味論 / 語用論 |
研究実績の概要 |
「研究実施計画」で述べたとおり、本年度の研究は、①「発話の元になる心的表象自体がどのような特性を備えているのかの解明」と②「心的表象の形式化には何が必要であるのかの解明」の成果に基づいて、③「心的表象を言語化する際の規則がどのようなものであるのかの解明」と④「 ①から③の成果に基づき、聾の子供が自ら作り出した手話言語に対し、意味論的分析を与えること」を目標として研究に取り組んだ。 しかし、③の遂行段階において、①と②の見直しがある程度必要であるとの認識にいたり、必要に応じて内的表象を形式化する際にどのようなアプローチが望ましいのかについての考察を重ねた。具体的には、「研究実施計画」で述べたDRTを用いての論理的・記号論的な表示方法に加えて、意味を多次元ベクトル空間上の点として表す、数学的なアプローチの妥当性を検討した。このようなアプローチが必要になった理由として、論理的・記号論的な表示は哲学や言語学では多用され、一定の利点があるものの、本研究が考察の一部に取り込もうとしている確率・統計的な扱いとの親和性がそれほど高くないという難点をもつことが挙げられる。他方、意味をベクトルとして表すアプローチは自然言語処理や機械学習で広く用いられており、そうしたアプローチを採用することで、こうした分野で得られた知見を利用しやすいのではないかと考えたことにある。 以上のような方法論的再考察を行ったことで得られたものは大きいと考えている。特に、③と関連して、意味の合成性という意味論の中心課題について新たな知見が得られたと信じる。他方、その分研究計画に遅れが出たことも事実であり、④の「聾の子供が自ら作り出した手話言語に対し、意味論的分析を与えること」の研究にほとんど時間を割けなかったことが反省点である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「研究実施計画」の①と②について当初の予定になかった再考察を加えたため、④の「聾の子供が自ら作り出した手話言語に対し、意味論的分析を与えること」にほとんど時間を割けなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
④の研究をすすめたうえで、「研究実施計画」で挙げた課題⑤「①から④の成果に基づいて、人称代名詞の意味論を構築すること」、更に⑥「①から④の成果に基づく、「行く」や「来る」といった表現に対する意味論の構築を行いたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
言語化されるべき内的表象を形式化する際、どのようなアプローチをとるべきなのかに関して、当初の計画になかった予備的調査が必要なことが判明し、その分本年度で行うことを予定していた研究打ち合わせが部分的に行えなかったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
十分な準備をしたうえで、本年度行えなかった打ち合わせを行うため、必要な海外出張を行う。
|