中国仏教経典に占める儒教起源語彙の計量学的研究を実現するため、唐代に道世が著した仏教典籍『法苑珠林』における東晉の干宝の『捜神記』の引用事例を調査した。本研究では、計量学的研究の前提となる両者の関係を明らかにし得た。『法苑珠林』の編者である道世が、仏教的宇宙観を展開した際に、その対峙性において、最も意識したものは『捜神記』であった。それは、『捜神記』が、数多くの変化を記録すると共に、それらの原理を追求する「五気変化論」という理論を有していたことによる。『成唯識論』を訳した玄奘の影響を受けた道世は、唯識思想により干宝の五気変化論を打破することで、仏教の優位性を明確に示したのである。
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