2016年度は日本で最も移住・移動者と接点をもった宗教組織であるカトリック教会を「支援の担い手」としてどのような特性を備えているのか、実地調査で明らかにすることができた。日本カトリック中央協議会という教団の移住・移動者支援の方針を把握するだけでなく、各々の教区でどのような支援を実施しているのか、網羅的に調査した。その結果、移住・移動者との関わり(支援内容・支援形態・組織体制など)は教会ごとにバリエーションがあることが分かった。 まず、支援体制については、移住・移動者の集住する大都市圏では、専従職員を有する専門性の高い相談窓口が設けられている場合が多く、それらは地域のNPOや行政との協働も一定程度進んでいた。したがって、地域社会におけるソーシャルキャピタルとしても位置付けることが可能であった。一方、非大都市圏では、移住・移動者の相談窓口はあるものの、支援体制としては脆弱で、専門に従事するスタッフを欠く場合が少なくなかった。しかし、大都市圏に比べると他の支援セクターが少ないため、移住・移動者支援の担い手としてのプレゼンスが相対的に大きいことが明らかになった。 これらの研究成果の一環として、2016年5月21日(土)に研究会「現代社会における移民と宗教」を東洋大学にて実施した。同研究会ではラメイ・アレック・ラッセル(文教大学)から「異文化の制限される時間:比日家庭と宗教継承の諸問題」、吉水岳彦(ひとさじの会事務局長、大正大学非常勤講師、浄土宗光照院副住職)・釈心智(グエン・ティ・ユウ、在日ベトナム仏教信者会会長)から「路上生活者支縁における在日ベトナム仏教信者会との協働について」の報告を受けた。また、2017年3月25日(土)に研究会「現代社会における移民と宗教」を関西学院大学で実施し、三木英編『異教のニューカマーたち―日本における移民と宗教』森話社(2017年)の合評会を実施した。
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