研究課題/領域番号 |
26580011
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研究機関 | 九州産業大学 |
研究代表者 |
須永 敬 九州産業大学, 国際文化学部, 准教授 (90390004)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 山岳宗教 / 修験道 / 英彦山 / 智異山 / 国際情報交換(大韓民国) |
研究実績の概要 |
本研究課題は、北部九州の英彦山・朝鮮半島南部の智異山における山岳宗教聖地の調査研究を通して、日韓山岳聖地の構成要素を把握するとともに、日韓双方の山岳宗教の歴史的変遷を明らかにし、地域社会における山岳宗教の民俗的意義について考察することを目的としている。 上記の研究課題を達成するため、3年目となる本年度は、韓国智異山の聖地構成・神観念・宗教的実践についての調査研究を集中的に実施した。 聖地構成については、智異山東麓の主要寺院(西院・碧松寺・龍遊堂・天王寺等)の構成と景観を把握するとともに、天王峰にいたる山内聖地(法界寺・カルバウィ・マンバウィ等)の踏査を行った。また、神観念については、伝統的な朝鮮半島の神観念と、朝鮮戦争を始めとする近現代の歴史とが併せ語られる状況を伺うことができた。また、宗教的実践については、龍遊譚のクッ堂において巫者の祭祀を実見するとともに、山神信仰と巫者との関係性についての聞き書き調査を実施した。 また、智異山と山岳宗教との関係性とその歴史的な変遷を明らかにするため、朝鮮宗教史を中心とした本研究関連に関連する文献資料を収集するとともに、その分析を進めた。 なお、本年度の研究成果については、Journal of Mountains and Humanities(Vol.3)、および『宗教研究』90(別冊)に論文・報告を発表した。また、第75回日本宗教学会(早稲田大学)のパネル発表「山岳宗教の再構築」において口頭発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
27年度の韓国でのMERS流行を受け、当初27年度に予定していた韓国調査の一部を、28年度に実施することとなった。本年度は、智異山東麓の山岳宗教関連地の踏査、および宗教職能者への聞き取り調査を実施するとともに、朝鮮宗教史関連資料および図像資料の収集を実施した。これにより、本研究の調査課題としていた日韓の山内・山麓・遠方地域における現地調査を一通り終えることができた。 また研究成果の公表については、海外学術誌に学術論文、国内学術誌に学術大会報告をそれぞれ一報ずつ発表するとともに、国内学会において口頭発表を実施するなど、順調に実施することができた。 なお、研究の進展に伴って、智異山山頂付近に未踏査の洞窟聖地が存在することが確認できた。これらは韓国山岳宗教の聖地観を知る上でも重要な調査地点であるが、冬季に現地調査を実施することが困難であったため、補助事業期間を1年間延長する申請を行った。期間延長申請の承認を受け、当初冬季に予定していた現地調査を来年度の春季に実施することにより、本研究課題をさらに精緻なものとしていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
期間延長を承認された29年度は、本補助事業の目的をより精緻にするための調査研究を実施する。具体的には、28年度冬期に実施できなかった韓国智異山山頂付近の洞窟聖地の踏査を実施する。併せて、韓国山岳宗教の聖地観についての総括研究を行うとともに、これまでの本研究課題の成果を論文として投稿・発表したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進展に伴い、調査地である韓国智異山の山頂付近に2箇所の洞窟聖地が存在することが新たに確認できた。これらは韓国山岳宗教の聖地観を解明する上で重要な調査地点であるが、確認できた時点ですでに冬季を迎えており、登山ルートから外れた現地の踏査が困難であった。そこで、28年度冬季に実施を予定していた現地調査を、29年度に延期して実施する。
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次年度使用額の使用計画 |
韓国智異山での現地調査を実施するため、その旅費の支出を計画している。また、現地調査の実施にともなう調査補助員・現地語通訳への謝金支出を計画している。加えて、日韓の山岳宗教に関わる資料購入費の支出を計画している。
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