本研究では、19世紀イギリスにおける「性格の科学」の分析をおこなった。具体的には、中産・上流階級にまで大きな影響力をもっていた骨相学、教育の重要性を強調し労働者階級に広く受容されたオウエン主義、およびこれらに対抗するものとしてJ・S・ミルによって構想されたエソロジーという3つの潮流を取り上げ、これらを相互の影響・対抗関係を念頭に置きながら検討することによって、①「性格の科学」の理論的特質、②「性格の科学」をめぐる歴史的文脈を描き出すこと、さらに③19世紀イギリスという具体例を通じて、「科学と社会」のあり方について考察した。
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