研究課題/領域番号 |
26580021
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
藤原 貞朗 茨城大学, 人文学部, 教授 (50324728)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 第一次世界大戦 / フランス美術史 / 美術史編纂 / パリ美術史考古学研究所 |
研究実績の概要 |
平成27年度の本研究の課題は、前年度に行った「パリ大学・国立美術館周辺の美術史家の調査・研究」を引き継いで「地方での美術史家の活動の調査・研究」を行うこと、そして、より広範なフィールド調査に発展させることであった。とくに、9月に行った国外調査において、パリだけではなく、フランスの複数の地方都市(リヨン、リール、マルセイユ)において、資料の収集と収集した資料の分析を進めることができた。とりわけ、戦時中にリヨン大学で行われた第一次大戦のための「文化工作」マニフェスト連続講演会(Questions de Guerre)の活動についての詳細な調査と資料収集、リヨンやマルセイユの美術館や公共施設などで行われたいわゆる「戦争美術展」とそれにかかわった美術史家についての調査と資料収集を行った。また、地方各地にある第一次世界大戦に特化した資料館や博物館を訪問し、所蔵資料や文書を調査した。 並行して、前年度からの継続として、パリのフランス国立図書館やパリ大学美術史図書館など、20世紀の美術史編纂に関する資料の充実したパリの施設において、資料収集もおこなった。計画書に記した「収集目的とする美術史家の著作・論文」のうち、約3 分の2の資料を現在のところ収集ないし複写することができている。 現地調査の後、個々の資料の分析を随時進めているところである。資料分析においては、戦時の対独言説の抽出とその戦後の影響を見定めることを目的としている。戦時中は当然ながら敵国美術への批判と自国美術の称賛と保護が声高に叫ばれるのだが、それが戦後の「普遍的」で「平和主義的」と称されてきたフランス美術史編纂にいかなる影響をもたらしたのか。この問いに答えることのできる資料の分類と整理を現在、進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の計画とした「フランスの地方での美術史家の活動の調査・研究」に基づいて、フランスの複数の地方都市(リヨン、リール、マルセイユ)で資料収集と資料分析を進め、とくに重視していたリヨン大学での「文化工作」マニフェスト連続講演会の詳細な調査と「戦争美術展」とそれにかかわった美術史家についての調査と資料収集を行うことができた。結果として、当初の計画書に記した「収集目的とする美術史家の著作・論文」のうち、約3 分の2の資料を現在のところ収集ないし複写することができている。資料の分析についても、おおむね、予定したペースで順調に進めることができている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の調査対象は美術史家の著作物や個人資料を対象とした文献学的調査と、活動の足跡を辿ることを目的としたフィールド調査・研究の2つに分かれるが、これまでに資料収集はおよそ目標の3分の2を達成することができている。 今年度は、まず、継続して、国外調査においては、パリの美術史図書館や国立美術館付属図書館、ルーヴル学院図書館など、美術史資料の充実した場所での資料収集を行うとともに、これまで収集した資料の分類と整理を進めたい。十分な資料体を完成させることが今年度のひとつの目的である。 さらに、収集資料の分析を鋭意進行せねばならない。資料分析では、戦時の対独言説の抽出とその戦後の影響を見定めることを目的とし、この目的に沿って、とくに、戦時中の敵国美術批判と自国美術の称賛と保護の言説の分析と、戦後の「普遍的」で「平和主義的」と称されるフランス美術史編纂との共謀的関係を明らかにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費が計画より低額で済んだため、わずかな差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度分の物品費と合算して使用したい。
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