研究課題/領域番号 |
26580022
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
五十殿 利治 筑波大学, 芸術系, 教授 (60177300)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 占領期 / 日本 / ドイツ / アメリカ |
研究実績の概要 |
日本の敗戦後の美術史については「戦後美術史」として一続きの括りがあるが、サンフランシスコ講和条約が結ばれ発効する1952年まで占領下にあったという事実が看過されるきらいがある。本研究では、その問題について、日本に限定することなく、国際的な視野から検討するものであるが、さっそく研究計画に即して、活動を開始した。 占領下日本における美術について検討する契機とするため、所属する明治美術学会における学会誌特集の編集の機会を得たため、これを活用して「占領期における美術展・展示空間」と題した特集を編集するとともに、その編集意図について、戦後美術史という枠組で本研究とも関係づけながら、特集解説としては紙幅を得て論じた。 また個別の研究題目として、研究を継続してきたGHQのCIEの情報センターについての研究について、早稲田大学のインテリジェンス研究会より研究発表を求められたので、とくにアメリカ絵画の複製画による美術展の経緯ならびにその意義について、新資料を提示しながら、論じた。なお、口頭発表後、同研究会よりその内容について論文寄稿を勧められ、同会編集の機関誌Intelligenceに掲載予定である。 また連携研究者の安松みゆきはドイツ現地調査を実施した。ドイツ連邦公文書館においてOMGUS(米国ドイツ軍政庁)のMFAA(記念碑、美術、建築記録課)に関する資料については、絵画作品《イタリアのホーエンシュタウフェンブルク》に関する資料に絞り、調査した。この作品に注目したのはグラーフ・プファフが制作し、1939年「大ドイツ美術展」に出品してヒトラーによって購入されたからである。入手した資料を精査し、終戦前の保管場所と移動経緯、また終戦後の所蔵経緯が明らかになった。その結果は、一部に解明できなかった面があったために研究ノートとしてまとめ、別府大学大学院の紀要に寄稿し、掲載予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度においては、日本における連合軍総司令部の占領政策と美術との関係に関する研究についての基本的な立場を雑誌で発表し、また個別的なテーマについても口頭発表を行った。その発表に基づいて寄稿を求められて、掲載が予定されている。 またドイツにおける調査を実施し、ヒトラーによって購入された作品について終戦前の保管場所等、さらに終戦後の所蔵経緯が明らかになり、論文としてまとられ、掲載が予定されている。
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今後の研究の推進方策 |
計画通りに、日本における占領期の美術活動についての研究を進めると同時に、同じようにアメリカの強い影響力のもとにあった韓国の状況にも留意しつつ、ドイツそしてアメリカの研究者とも連絡をとり、最終年度における国際研究会にむけて、周到な準備を行う。 今年度においても、ドイツにおける実地調査を継続し、最終年度に招くべき研究者と連絡をとる一方で、Association for Asian Studiesの台北大会が開催されるので、この機会においてアジアにおける美術史研究者との研究交流を行い、戦後美術史について、本研究が目指している視点の共有ならびにフィードバックを得ることを図る。またこの大会においてアメリカの研究者とも研究交流を図る機会を積極的に求める。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた調査先との日程が合わず出張を取りやめたため未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度に予定している国際研究集会の準備のため、美術史研究者との研究交流のための一部に充てる予定である。
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