本研究は敗戦後の日本における美術状況について、アメリカを中心とする連合軍による占領期という視点を導入して、新たな照明を当てるものであり、従来の「戦後美術」という概念を補完することを目指すとともに、日本と同じように、枢軸国として敗戦により大きな社会変革を経験したドイツを比較考量した結果、各種の民主主義的な情報発信と文化宣伝を行う、共通する文化戦略の拠点整備(アメリカ・ハウス、CIEライブラリー)を確認した。なお、これは米軍施政下の南朝鮮でも同様であった。一方で、見逃せないこととして、日本とは異なり、ドイツでは戦前のモダニズム排斥を回復する動向が美術展などでも顕著に見られる。
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