研究課題/領域番号 |
26580025
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
酒井 たか子 筑波大学, 人文社会系, 教授 (40215588)
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研究分担者 |
Bushnell Cade 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (30576773)
山田 亨 筑波大学, 人文社会系, 助教 (60706943)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 落語 / 日本語教育 / e-learning / 文化 / 話芸 / 理解 |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、「日本の話芸」における「おかしみ」に関して、調査材料の充実と、日本語教育、会話分析、コンピュータによるCALL研究の各側面から研究を進めた。 調査材料の作成に関しては、研究協力者であるプロの落語家に依頼し、留学生を対象とした口演会を2回開催した。演者と聞き手の反応を、複数の方向からのビデオ録画およびICレコーダー録音を行い、映像は利用しやすいように編集し音声は文字化した。今年度は、日本語学習者のための解説を加えたほか、特に落語の地域差(方言)の違いによる笑いとその理解に焦点を当てるため、上方落語と江戸落語が比較できるよう同じ内容の小噺10本を収集した。 これらの調査材料を使って、会話分析の手法を用いて、日本語学習者が落語を視聴しながらどのようなふるまいをするかを映像・音声の面から検討し笑いを引き起こす要因を明らかにした。CALLプログラムについては、利用のしやすいインターフェースについて日本語母語話者および日本語学習者に対する試行調査を行い、改善を加えた。日本の話芸を日本語教育においてどのように利用できるかに関しては留学生に対するインタビューおよびアンケートにより調査を実施した。また日本語学習者が落語を理解できるようになるためのスキャフォールディング(足掛かり)として、適切なクイズや解説のあり方についての検討を行った。 グローバルコミュニケーション教育センター日本語教育論集(2016年3月)のほか日本語教育学会秋季大会(2015年10月)、CASTEL/J(2015年8月)、筑波大学グローバルコミュニケーション教育センター日本語教育部門FD研究会(2015年11月)における発表を行った。また「第3回文化とことばのコラボレーション」(2016年1月)を主宰し、本研究成果を発表するとともに、日本語学習者や大学院生を中心に発表や意見交換の場を提供した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CALLプログラム開発は、昨年度の問題点を改善しほぼ完成することができた。コンテンツに関しては予定以上の映像、音声素材の収集を行うことができた。調査材料をCALLプログラムに載せる作業に時間がかかり、そのため調査データの収集に関してはやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、非母語話者の落語の研究者にも加わってもらい、日本文化の特殊性と普遍性と笑いの違いに焦点を当てて研究を進める。具体的には 1.平成27年度に作成した地域差(上方落語と江戸落語)の調査材料を利用して、笑いの違いや日本語学習者の理解に関して検討する。 2.コンピュータによるe-learningのコンテンツを充実させる。特に非言語の理解を中心とした笑いの側面に焦点を当てた調査資料を作成し分析を進める。 3.CALLプログラムを日本語レベルの異なる日本語学習者、母語背景、および母語話者の試行し、データ収集を行う。また、e-learningのサイトを公開し、利用者からの情報を収集する。 4.研究成果を国内外の学会、研究会で発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画したコンテンツに加えて、新たに地域差(方言)による笑いとその理解に関する内容を追加した。この部分の映像・音声の編集作業やシステムへの搭載、および学習者の調査に関しては平成28年度の作業とすることにした。
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次年度使用額の使用計画 |
未使用額の研究経費は、データ処理のための経費および調査のための謝金に使用する予定である。
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