研究課題/領域番号 |
26580029
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
久保 仁志 東京藝術大学, 学内共同利用施設等, 助手 (00626765)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アーカイヴ理論 / 映画理論 / 芸術理論 / モンタージュ理論 / 日本映画 / インターフェース開発 / 美術 / いけばな |
研究実績の概要 |
2015年度は昨年度に引き続き、財団法人草月会資料室(以下資料室と呼ぶ)所蔵勅使河原宏映画関連資料の「物理的腑分け作業およびリスト化」「資料のデジタル化」「インタビュー」「ロケ地調査」を行った。 ● 物理的腑分け作業およびリスト化:昨年度整理中であった《豪姫》の物理的整理および、リスト化を完了させるとともに、各映画単位だった資料群の中でさらに腑分け可能なものを分類・データ採取し、保全管理に必要な処理を適宜施した。● 資料のデジタル化:《おとし穴》《砂の女》写真資料の一部および、《おとし穴》関連資料(台本:件、件、件)のデジタル化を行った。● インタビュー:2015年6月17日に勅使河原宏映画でスクリプターをしていた吉田栄子氏にインタビューを行った。● 《おとし穴》のロケ地である筑豊一帯の調査を行った。また、飯塚市歴史資料館(館長:嶋田光一氏)、鞍手町歴史民俗博物館(学芸員:長谷川富恵氏)、田川市石炭・歴史博物館(館長:阿蘇龍生氏)の協力を得て、《おとし穴》の大きな背景となっている炭鉱の歴史および遺構の調査を行うことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、資料室所蔵の紙媒体を主とした各映画単位の物理的整理は完了し、データベース構築のためのリスト整備および、インターフェースのデザインを行っている。● 吉田栄子氏へのインタビューによって資料と映画制作時における様々な知見を得ることができた。特に、撮影時に生産される膨大なスクリプト(特に《砂の女》のスクリプトが充実。)群に関する内容についてのコメントをもらうことがき、更なる腑分けを進捗させることできた。インタビューの際、非常に印象に残ったのは「監督が脳だとしたら、スクリプターは眼なんです。」という言葉であった。それは、一つも取りこぼすことなく眼前の撮影現場で起こっている出来事を記録しようとした人の意志の表明であり、改めてスクリプトが撮影現場を知る大きな手がかりの一つであるということが分かった。● ロケ地も資料の一つと捉え、それらを紙媒体資料群および視聴覚資料群と統合し、総合的な資料体を構築するための一つのモデルとして《おとし穴》を選定し、そのロケ地である北九州筑豊地帯の調査を、飯塚市を中心に行った。撮影時(1961年)の様子をとどめている場所はほぼなく、かつての炭鉱鉱業所が太陽光発電のソーラーパネル敷設地と運用されていたり、ボタ山が公園になっていたりとそれ自体がラディカルに変化するという非常に特殊な対象であることを改めて認識した。しかし、それらロケ地の中へ突出した遺構群(完全な姿を留めているものはほぼない。)は当時の時間を現代へと運ぶ壊れかけたタイムマシーンのような非常に特殊な資料であり、それらを中心に映像による記録を行った。
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今後の研究の推進方策 |
資料室所蔵資料:引き続きWEBデータベース構築のためのリスト整備(項目の再検討および、データ採取)を行っていく。また関連写真の整理作業を進めるとともに、紙媒体資料との統合を進める。● ロケ地資料:引き続き《おとし穴》ロケ地調査を行い、ロケ地資料を収集し、それらと《おとし穴》関連紙媒体資料・視聴覚資料をデータベースレベルで統合していく。● これらの研究を通して、映画関連資料をどう構築していくかについての一つのモデルの提案を行うとともに、アーカイヴが絶えずモンタージュ状態であることを見せることのできるインターフェースの設計・構築を目指す。● 映画制作:《おとし穴》という映画をアーカイヴ化するための一つのモデルとして映画を制作する。
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備考 |
「〈民族音楽〉との邂逅 ―― 小泉文夫のメッセージ」関連印刷物・WEB制作、編集、企画を行った。
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