本研究の目的はデジタル・データベースを主眼に据えたアーカイヴ構築が主流とされる現在において、改めて資料体をアーカイヴ化するプロセス(設計・構築・公開)とそのインターフェース(資料体とその利用者の界面)の不可分性に着目し、勅使河原宏によるモンタージュの原理を取り入れ、アーカイヴの新たなインターフェースの可能性とその方法論を探求し展開することにある。 2014年度は主に、草月会館(赤坂)に未整理の状態で残された勅使河原宏(1927-2001)映画関連資料の分類・調査・保存処理などを中心に行い、リストを整備していった。それに併せフィルモグラフィの刷新を行った。また、損傷の激しい台本類を中心にデジタル化を行い、元勅使河原プロダクションの野村紀子氏へ資料体ができたプロセスについてのうかがった。 2015年度は、リストのさらなる整備を行うと共に、勅使河原宏の多くの映画にスクリプターとして参加した吉田栄子氏へのインタビューを行った。それを元に、スクリプト(撮影現場において何が撮影されたのかを図と文章によってカットごとに記録した紙)のさらなる腑分けを行った。また、ロケ地も重要な資料であると考え、《おとし穴》をモデルにし、北九州の筑豊一帯の調査を行った。撮影時(1961)の様子を留めている場所はほぼなかったが、ロケ地の中へ突出した遺構群(完全な姿を留めているものは皆無である。)は当時の時空間を現在へと運ぶタイムマシーンのような非常に特殊な資料体であることが明らかになった。 2016年度は、《おとし穴》自体が当時の炭坑の様子を伝える重要なアーカイヴ・モデルでもあることに焦点を当てると共に、どのようなインターフェースが可能なのか、またアーカイヴにとってモンタージュとは何かについての研究を行った。それらは、研究報告として発行した三つの印刷物(一つは台本として作った)においてまとめられている。
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