本研究はこれまでにデジタル技術を用いた新たな演出方法を開拓し、鑑賞者と映像とが一元化する視覚体験装置を用いて、身体性を強化した映像表現を追求することで、鑑賞者が自然に映像の世界に入り、 そこで体験を生むことのできる映像表現を目指してきた。本年度はこれまでの研究をふまえて制作した映像作品をwebにまとめるとともに、空間やパフォーマンスを映像記録する上での演出方法について再考するためにパリのポンピドゥーセンター、IRCAMで行われた両センター設立40周年イベント“MANIFESTE 2017”で行われた霧とパフォーマンスのコラボレーション作品“NIAGARA REVERB”の映像化を試みた。映像化するにあたり、環境(映像を含む)と身体がどのように関係し、それをどのようにリアリティを保ちながら記録すれば、鑑賞者が映像から体験を生むことができるかを実践を通して発見することができた。これらの発見を通して、これまで行ってきたデジタル技術を用いた新たな演出方法の開拓は、その演出方法自体から新しい映像表現を作り出すだけでなく、映像記録の観点からも鑑賞者が体験を生む映像空間を再構成することにもつながることがわかった。
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