研究課題/領域番号 |
26580034
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研究機関 | 国際日本文化研究センター |
研究代表者 |
坪井 秀人 国際日本文化研究センター, 研究部, 教授 (90197757)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 戦後民衆文化運動 / サークル運動 / 日系移民 / 強制収容所 / 留用 |
研究実績の概要 |
当該年度においては戦時期の民衆文化運動の特殊な事例としてアジア太平洋戦争勃発後のアメリカ合州国における日系移民の強制収容所における文学表現を収容所(Internment of Japanese Americans)内で発行されていた日本語雑誌と英字新聞を分析することを通して考察した。特にハートマウンテン収容所で刊行されていた『ハートマウンテン文藝』とトゥリーレイク収容所で刊行されていた『鉄柵』の詩歌、特に短歌表現を分析し、両者の比較考察を行った。 その成果の一部は2015年6月5日にカリフォルニア大学ロサンゼルス校で開催されたUCLA Trans-Pacific Symposiumにおいて報告し、11月12日にベルリン自由大学で開催されたワークショップ"Exploring Space in Japanese Literature"においても"Inside the Fence: Writing in the Japanese-American Internment Camps"という表題で報告した。ベルリン自由大学の報告原稿(英語)は日本語に翻訳して論文化し、「柵の中で ──日系人強制収容所の中の書記空間(ライティング・スペース)──」として『JunCture(超域的日本文化研究)』第7号(2016年3月刊行)に掲載した。 戦後のサークル運動研究も同時に並行して行い、その調査を総括した報告を2015年11月1日、名古屋大学で開催された第9回戦後文化運動合同研究会にて「労働の中から書くこと」と題して行った。この報告も同研究会が主体となって編集刊行される論文集に今年度には掲載される見込みである。 さらに今年度に繋がる調査として中国の北京および黒竜江省において戦争直後の満州における留用者が刊行していた雑誌『ツルオカ』の調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
アメリカ合州国、ドイツおよび中国において調査研究が進み、研究計画時当初の構想をこえた拡がりのある国際的研究へと発展する可能性が高まってきたことが確かめられた。これまでの戦後サークル運動の研究も一区切りできる見込みが立ってきた。さらに勤務先の予算を取得して構築した共同研究会のウェブサイトには未発表資料のアーカイブを組み込むことが出来たので、調査した資料の活用と共有のシステムが向上したことも特記できる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は最終年度となるので、これまでの研究成果を論文化したり口頭発表してまとめることを中心的に行う。国際的な比較研究は当初からの目的の一つでもあったので、今年度は海外の研究者との議論や意見交換の場を持つことが出来ればと考えている。昨年度から着手した中国旧満州における日本人留用者による文化活動の調査は今年度も継続する。留用者が刊行していた雑誌『ツルオカ』についてはデータ化がほぼ完了しているが、まだ所在がわからない欠号が1冊あり、その調査は引き続き行うとともに、関係者へのインタビューも継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計上されていた謝金・人件費を当該年度においては使用しなかったこと、翻訳料等その他に支出が傾斜して他の費目の支出が抑えられたことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は資料のPDF化等で謝金・人件費を使用する見込みであり、最終年度であるので研究のまとめに必要な費目に前年度不使用分を合わせた金額を支出する予定である。
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