研究課題/領域番号 |
26580036
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
高橋 美樹 高知大学, 人文社会科学系, 准教授 (30403869)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 田辺尚雄 / 沖縄 / 民族音楽調査 / レコード / 録音 / 沖縄民謡 / 琉球古典音楽 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、田辺尚雄が1922年に実施した「沖縄・八重山諸島音楽現地調査」を起点として、近代沖縄における録音・レコード音楽の成立を明らかにすることである。26年度は以下の調査を実施した。(1)1922年沖縄調査の全容を把握するために、沖縄県立芸術大学附属図書館「田辺文庫」で資料収集を行った。特に、歌詞・楽譜資料、フィールドノート、楽器の写真、書簡を中心に撮影した。さらに、琉球古典音楽、沖縄民謡のSPレコード(40枚)とLPレコード(17枚)を対象に、レーベルと歌詞カードの撮影を行った。レコード会社別のディスコグラフィーを作成した結果、沖縄音楽初の商業録音SP(制作:大阪蓄音器株式会社)が5枚所蔵されていた。高橋2011『高知大学教育学部研究報告』71号でこのSPについて論じた時には実物が発見されていなかったが、調査により確かに販売されていたことが判明した。その他、日本コロムビア、沖縄音楽専門レーベル・トモエレコード(那覇市)のSPが所蔵されており、40枚の中には1922年調査の際、購入したものも含まれている。(2)田辺が日本・アジアの音楽研究をふまえ、沖縄の音楽をどのように位置づけていたのかを解明するため、国立劇場所蔵「田辺尚雄・秀雄寄贈資料」の資料収集を行った。田辺自筆記録『音楽見聞録』(53冊)、スクラップブック(38冊)を調査した結果、様々な交友関係を通じて沖縄音楽の知識や情報を入手していたことが明らかになった。(3)沖縄県金武町教育委員会には海外に移民した沖縄出身者が寄贈したレコードが所蔵されている。近代沖縄のレコード産業の成立を明らかにするためには、音源の複製デジタル化が不可欠と考え、教育委員会の協力のもと実施した。その結果、沖縄音楽のレコードが沖縄からブラジルへ送られ、それを原盤として制作された海賊盤LPが沖縄系コミュニティで販売されていた実態を確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究に関わる2つの調査は順調に進んでおり、田辺の著書『南洋・台湾・沖縄音楽紀行』による沖縄調査の記述と収集した資料との照合作業も実施した。当初は沖縄県立芸術大学附属図書館「田辺文庫」所蔵のレコードを複製デジタル化する予定であったが、沖縄県金武町教育委員会所蔵レコードのデジタル化を先に実施し、その研究成果を論文としてまとめることができた。
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今後の研究の推進方策 |
1. 26年度に実施できなかった沖縄県立芸術大学附属図書館「田辺文庫」所蔵のレコード音源を複製デジタル化する。 2. 八重山出身の民俗学者・喜舎場永珣と田辺との学術交流の実態を把握するため、石垣市立八重山博物館所蔵「喜舎場永珣コレクション」の資料収集を行う。 3. 沖縄調査に関する田辺の紀行文を時系列に整理するだけに留まらず、田辺文庫所蔵の録音・文献資料と照合させることにより、沖縄音楽の共時的な様相・実態と、沖縄音楽界及びレコード産業の通時的な変容を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、600枚程度の写真現像をする予定であったが、実際は478枚の現像で納まったため、1091円の残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
1. 東京での資料収集と沖縄・八重山諸島調査のための国内旅費に使用する。2. 沖縄・八重山諸島の音楽・芸能関連書籍とレコード・録音・複製技術関連書籍に使用する。3. 沖縄県立芸術大学附属図書館「田辺文庫」所蔵レコード音源の複製デジタル化に使用する。
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