研究課題/領域番号 |
26580049
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研究機関 | 国際日本文化研究センター |
研究代表者 |
荒木 浩 国際日本文化研究センター, 研究部, 教授 (60193075)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 月の顔 / 言語のプライバシー / 世界文学と文学史 / 古典研究の国際的戦略 |
研究実績の概要 |
本年度の課題は、前年度までに蓄積した諸問題の整理と統合、そして活字化等の基盤を確立することであり、そしてまた、その延長線上に新たなテーマを開発し、「古典文学研究の可能性」を追究することであった。その際に立てた計画に従って、本年度は、以下の研究を遂行した。 1、「言語のプライバシー」というテーマ(ベネディクト・アンダーソン『想像の共同体』にヒントを得た私のターム)を構想し、十世紀以降の日本の対外観と仏教文化の問題に応用して分析した。その対象は『日本往生極楽記』『往生要集』『今昔物語集』などと宋との関係と意識の問題であり、国内外の学会講演、シンポジウム等に参加して、成果を発表した。2、戦後の「世界文学」観については、日文研研究会で「文学史からかえりみた英雄時代論」と題した発表を行ったほか、研究の整理を行い、28年度開催の学会シンポジウムにおいて、一部議論を継続して発表する。3、古典研究の国際的戦略の研究については、日文研での事業や招待も含めて、中国、ブルガリア、イタリア、アメリカに於いて、関連テーマの発表や研究交流を推進した。とりわけブルガリアでは、ソフィア大学日本学科創立二十五周年記念学会での発表を指名され、本科研のテーマの一つである、「月の顔」をめぐる文化形象について「煙たい月と日本文化―その顔の形象をめぐって」と題して発表し、論文化した。また大阪大学において、大阪大学大学院文学研究科「グローバル日本研究クラスター」の招待講演を行った。4、上記の諸問題を受け、日文研での基幹研究プロジェクトともリンクする共同研究を構想した。研究代表者として、28年度より発足する。5、また本研究を受け、新展開の新規挑戦的萌芽研究「国際的日本研究における古典文学研究の基層と戦略」を立案した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究内容は計画以上に進行し、成果も生み出しているが、発表内容の活字化が、掲載誌側の都合などもあって28年度以降になること、及び、27年度の公務激務等によって、事業の十全の完結が難しく「事業期間延長」を行ったため、(1)ではなく(2)の「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
27年度から延長した28年度においては、掲載誌等の理由によって遅れた関連発表の論文化を完遂し、その分析を進め、今後の研究展開を構想する。
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次年度使用額が生じた理由 |
課題研究については、学会での発表などを中心に順調に進行した部分も多いが、勤務先の研究機関で筆頭研究調整主幹をつとめ、運営・総括とともに、概算要求、中期目標・中期計画策定の中心的役割を担った。そのため、関連省庁や関連機関への出張と交渉、また新規発足の研究プロジェクトの計画・準備のための海外出張などが過密・多忙になり、研究の総括と終結への最終段階についての十分な時間がとれず、また掲載誌の関係で論文の活字化も28年度にずれ込むため、プルーフィングを軸とした更なる調査、出張も行う。
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次年度使用額の使用計画 |
上記の理由を踏まえ、論文化のプルーフィングを中心とした出張旅費を軸に、関連物品費等とともに執行する。
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