本研究は19世紀前半のイングランドにおける女性の慈善活動において、女性たちの経済意識の歴史的意義を、文学作品を通して実験的に考究したものである。19世紀初頭の奴隷貿易廃止運動において、女性たちは奴隷たちの労働の産物である西インド産の砂糖をボイコットする一方で、ウェッジウッドの反奴隷貿易キャンペーン用のカメオを購入した。矛盾するような慈善をめぐる消費活動は、同時代の文学作品にも頻繁に考察できる。調査の後半はエリザベス・ギャスケルとハリエット・マーティノーとの言説において、家政の延長線上としての公共圏での事前活動における女性たちの経済意識の軌跡を辿ろうと試みた。
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