イギリス・ロマン主義を代表する批評家であるウィリアム・ハズリットの思想書『人間の行為の原理についての試論』を中心に、ハズリットの無私的想像力論がイギリス啓蒙思想をどのように継承しているのか、またどのような点で異なっているのかを明らかにしようとした。その結果、人間精神の本性的無私性を主張するハズリットの思想が、共感能力の重視においてシャフツベリ、ハチスン、またアダム・スミスなどの道徳哲学の系譜上の位置するのは明らかであるが、その議論の基盤が生得的道徳感覚ではなく、自己の未来と他者との間に区別をつけない想像力の働き方そのものに置かれているという点で、まったく新しい独自のものであることがわかった。
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