研究課題/領域番号 |
26580057
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
辻 昌宏 明治大学, 経営学部, 教授 (00188533)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | リブレット / バロック・オペラ / 草稿 / W.H.オーデン / マクニース |
研究実績の概要 |
本年度は、オーデンとコールマン共作のリブレットとマクニースのラジオ・ドラマの読解・解析を進めた。 また、ニューヨーク・パブリック・ライブラリーでリブレット Delia の草稿を調査した。タイプ稿に手書きで書き込みのあるものが2つ残されている。つまり、単なる思いつきにおわった未完の作品ではなくて、リブレット(オペラ台本)としては、丁寧な作業をへて完成に至っているものであることが判った。 この作品は作曲家ストラヴィンスキーのために書いたものだが、最終的にはストラヴィンスキーが曲を付すことはなかった。ただし、草稿を見ると、ここはアリアであるとか、ここはレチタティーヴォであるとか、ところによってはアリアとレチタティーヴォの領域を可変的に設定しているところもあることが判った。つまり、オーデンとコールマンは、前作 The Rake's Progress の経験にのっとり、きわめて具体的にオペラ台本として書き進めていたことがわかった。また、題材として騎士ものであり、バロック・オペラが参照軸として存在していることをうかがわせるものであった。ただし、バロック期に多かったのが、イタリアの詩人アリオストの叙事詩『狂えるオルランド』やタッソの叙事詩『解放されたエルサレム』を原作とするものが多いのに対し、本作は、George Peeleの The Old Wives' Tale にもとづいている。また、ストーリーに寓意的要素が強く、反写実的、反自然主義的なのは、前作The Rake's Progress と共通している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
作品読解・解析を進めることと、ニューヨーク・パブリック・ライブラリーにおけるW.H.オーデンとコールマン共作のリブレットの草稿調査を実施することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
W.H.オーデンのリブレットおよびラジオ作品とマクニースのラジオドラマの読解・解析を進めるとともに、ブリティッシュ・ライブラリーで彼らのラジオ作品を聴く作業を進めたい。特に、ラジオ作品でどのように音楽が使用されているかに関しては、活字のテクストだけでは判断しかねる部分があるので、この作業が重要になってくる。
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