本研究は、従来の伝統的な伝記とは異なる「メタバイオグラフィー」を学際的に研究し、新しい文学ジャンルとして確立することを主目的として行い、最終的にポストモダンの時代に書かれた「メタバイオグラフィー」を分野横断的・包括的に研究することを通して、モダニズム・ポストモダニズムの関係性を再考することを目指して行われた。平成27年度は、前年度に行ったふたつの口頭発表―第86会日本英文学会全国大会(北海道大学)におけるニコラス・A・ルプケ『アレクサンダー・フォン・フンボルト伝』(2008)とA・J・A・シモンズ『コルヴォーを探して』(1934)について考察した発表、イタリアのガルニャーノで行われた第13回国際D・H・ロレンス学会におけるジェフ・ダイヤーの『怒りに任せて:D・H・ロレンスとの格闘』(1997)を考察した発表―を論文にし、国内・海外ジャーナルに投稿した。現在、査読結果待ちの状態である。また、平成27年5月には、イギリスのキングズ・コレッジ(ロンドン)で行われた国際学会において、「新しい伝記」を創始したリットン・ストレイチーに第一次世界大戦が及ぼした影響という観点から口頭発表を行った。本研究では、「メタバイオグラフィー」の誕生が20世紀初頭、とくにリットン・ストレイチーやヴァージニア・ウルフなどが活躍したモダニズムの時期であることを論証すると同時に、モダニズムの時期に書かれた「メタバイオグラフィー」の特徴がポストモダンの「メタバイオグラフィー」に発展的に継承されていることを確認した。
|