コクトーの文学・芸術について考察する上で重要な手掛かりとなるのが、彼が晩年の12年間に書き残した厖大な分量の日記で構成される『定過去』だが、そこでは、「空飛ぶ円盤」や「前衛考古学」など、いわゆる「オカルト」として学問的な考察の対象から除外されがちな話題が数多く取り上げられている。本研究において、その背景を慎重に探った結果、エメ・ミシェルをはじめとする在野の若い学者たちとの交流を通じて現代物理学に異議を唱える「超科学」の思想に共鳴したコクトーが、UFOや超古代文明の存在を肯定的に捉える彼らの思想で以て自らの時間観・死生観を理論武装しようとした可能性を指摘するに至った。
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