本研究は、20世紀初めに来日して日本絵画、書籍を4000点ほど蒐集して帰国したエマニュエル・トロンコワのコレクションが、その死後、国立図書館、ギメ美術館等フランスの公共美術館・図書館に所蔵されて、そのままその多くが館内に死蔵されていることを惜しみ、コレクションの価値を新たに新しい知見の光を当てて、本来の意義を明らかにしようとするのを目的とした。そのためにトロンコワの膨大な日本コレクション中、主として美術品に的を絞り、フランスに出張して、エコール・ド・ボザール、ギメ美術館、アールデコ美術図書館など関係する機関において、それぞれの学芸員たちの協力を得ながら1点1点精査して写真撮影を行い、その成果をもとに申請者の所属する大手前大学において、トロンコワ・コレクションに興味を以て研究成果を挙げている内外の国際的研究者を招聘して、合わせて10数名におよぶ発表者で構成される国際シンポジウム開催、同時にコレクションの一部を展観して、長年それぞれの美術館で眠っていたコレクションの形成の経路や収蔵にいたる経緯を含めて、その全貌を明らかにするとともに、膨大なコレクションが単なる趣味に止まらず、トロンコワの周到な学術的意図ののもとに集められたことを論証した。研究成果は日仏両語で2016年3月末に思文閣出版より刊行し、未公開の絵画資料を鮮明な写真画像で印刷刊行しコレクションの全貌を幅広く世界に開示するに至ったのは本研究の大きな成果である。
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