情報通信技術(ICT)の発達は人という存在のあり方に影響を及ぼしている。ICTによって形成されていく環境においては、柳宗悦の議論に従うと、対象を「こと」として認識・操作する傾向がこれまで以上に偏重され、「もの」として認識することの重要性がさらに等閑視されることになる。またこの傾向は、大島清次の議論に従うと、「公」の領域の肥大化と、「私」という意識の領分への抑圧となる危険がある。このような見地にたつとき、人間らしさを擁護するための手段や契機として、「手応え」という摩擦・抵抗感を設定し、この言葉のもとでICT革命を批判する思想運動を構想することには一定の意義が認められると思われる。
|