研究実績の概要 |
主語が目的語に先行する語順(SOV, SVO, VSO)を基本語順に持つSO言語の話者と,その逆に目的語が主語に先行する語順(OSV, OVS, VOS)が基本語順のOS言語の話者とでは,前言語的な思考の段階で既に事象を認識する順序(思考の順序)が異なっているのであろうか。たとえば,SO言語の話者は他動的事象を「動作主・対象」の順序で認識し,OS言語の話者は「対象・動作主」の順序で認識するのであろうか。それともSO言語の話者もOS言語の話者も思考の順序は同じで,思考内容を言語化する段階で語順に違いが生じるのであろうか。本研究の目的は,このような思考の順序と言語の語順との関係を実証的に検証するための新たな研究手法を開発することである。 それを踏まえて,27年度は,新しい実験手法の実効性を確認するために、OS言語であるカクチケル語(グアテマラで話されているマヤ諸語のひとつ)とタロコ語(台湾で話されているオーストロネシア語族の言語のひとつ)の話者を対象に、言語の語順と思考の順序の関係を調べる実験を行った。その結果,ヘッドマウント式ディスプレイ一体型視線計測装置を使わなくても,被験者への教示とデータ解析の手法を工夫することによって,Tobii TX300のように実験参加者の負担が少ないタイプの机上据え置き型の視線計測装置で充分に必要なデータがとれる見通しがついた。現在,データをさらに詳細に分析している最中である。
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